円安進行でも「動かない」日銀、批判の中で植田総裁が示した“普通の金融政策”への道政策金利の据え置きなどを決めた金融政策決定会合を終え、記者会見する日銀の植田和男総裁=4月26日 Photo:JIJI

日銀に対する円安放置批判
円安対応の利上げという誘惑

 4月25日・26日に開催された金融政策決定会合では、円安の進行を受けて日本銀行が政策金利の引き上げや長期国債買い入れ額の減額といった対応に踏み切るのではないかとの期待が一部にあった。しかし日銀は金融政策運営の現状維持を決定した。

 このため、決定会合後の総裁記者会見やその後のメディアの報道では、日銀は円安を放置するのかといった論調での批判が高まった。白川方明氏が日銀総裁を務めていた時期より前の日銀に対しては、円高是正のために金融緩和をするべきという批判が高まっていたが、今はそれと逆のことが起きている。ただ、日銀は為替の変動に金融政策で対応すべきという空気が日銀を取り巻いているという意味では、実は今も当時と同じことが続いている。

 日銀は金融政策の正常化を目指し、政策金利を中立水準まで引き上げようとしている。為替を理由に政策金利を引き上げることができるのであれば、日銀にとって渡りに船という見方も出てこよう。

 しかし、うかつにこの誘い水に乗って円安との戦いを始めることは、日銀にとってメリットがないどころか、最悪のシナリオとなるかもしれない。