米コンサルティング大手、ボストンコンサルティンググループ（BCG）と伊藤忠商事は4月中旬、合弁でコンサル会社を立ち上げた。新会社はDX（デジタルトランスフォーメーション）コンサルにどう取り組んでいくのか。長期連載『コンサル大解剖』の本稿では、インタビューの後編として、新会社の戦略に加え、DXやコンサルの需要の見通しなどについて、今回の合弁事業の総責任者である伊藤忠の堀内真人情報・通信部門長とBCGの桜井一正マネージングディレクターに聞いた。（聞き手／ダイヤモンド編集部副編集長 名古屋和希）
BCG・桜井氏「下流から上流のループを回す」
伊藤忠・堀内氏「上流から相談の要望に応える」
――4月に伊藤忠商事とボストンコンサルティンググループの合弁で発足したコンサルティング会社「I＆Bコンサルティング」は、どのようにDX（デジタルトランスフォーメーション）支援を進めていくのでしょうか。
桜井一正氏 I＆Bでは、最終的には、顧客企業の売り上げや利益、企業価値の増大につなげるところが大前提ですが、顧客企業のやりたいことを戦略的にデザインして、それをITやDXで実装していくことがコアになります。
進めていく上で、重要なポイントがあります。一つは、ビジネス感覚です。DXやITの変革は、ついついそれ自体が目的化してしまい、何をやっていたのか、という話になることも少なくありません。意味があるのかどうかという感覚を、上流のコンサル領域で持つことが大事です。
一方で、壮大な設計図を書いて、広げた風呂敷を畳まないことで下流で大炎上する案件もあります。足元のITやオペレーションを理解した上で、設計図をどう描くか。「As-Is」（現状）と「To-Be」（目指すべき姿）をしっかり最初に埋め込まないと破綻することが多いのです。
伊藤忠傘下の伊藤忠テクノソリューションズ（CTC）など足元の状況や顧客のことが分かる企業と、意味のある提案をつくることが重要です。単に上流から下流に流すのではなく、I＆Bでは下流から上流へのフィードバックループを回していきたいと思います。
堀内真人氏 CTCは1万社の顧客がいて、今までは要件を聞いてITを提案してきました。ただ、もっと上流から相談したいという要望もありました。BCGと一緒にやることで、そうした課題を解決できます。
次ページでは、BCGの桜井氏が今回の伊藤忠との合弁事業で「新たな武器を持てた」と強調する。伊藤忠とBCGの合弁会社が展開するコンサルビジネス戦略の具体的な中身とは。BCGの従来のコンサルビジネスを食う「カニバリ」は起きないのか。加えて、両社のどんな社員がI＆Bの仕事に関わることになるのか。今後のI＆Bの人員体制に加え、国内のDXやコンサルの需要の見通しについても両社の総責任者に解説してもらった。
