価値観が多様化し、先行き不透明な「正解のない時代」には、試行錯誤しながら新しい事にチャレンジしていく姿勢や行動が求められる。そのために必要になってくるのが、新しいものを生みだすためのアイデアだ。しかし、アイデアに対して苦手意識を持つビジネスパーソンは多い。ブランドコンサルティングファーム株式会社Que取締役で、コピーライター/クリエイティブディレクターとして受賞歴多数の仁藤安久氏の最新刊言葉でアイデアをつくる。 問題解決スキルがアップ思考と技術』は、個人&チームの両面からアイデア力を高める方法を紹介している点が、類書にはない魅力となっている。本連載では、同書から一部を抜粋して、ビジネスの現場で役立つアイデアの技術について、基本のキからわかりやすく解説していく。ぜひ、最後までお付き合いください。

既存の制約をひっくり返すことで新しいコンセプトを生みだす【前提ひっくり返し発想法】Photo: Adobe Stock

同質化の罠にはまらないために

 新しい商品、新しいサービスなどを、ゼロからつくっていくことはなかなかハードルが高いことです。そんなとき、売れる定石やヒットする前提、話題になる条件などをリサーチすることはとても重要です。

 しかし、そのリサーチ通りの「理想」をただ目指せばいいのでしょうか?

 たいていの商品は、ヒットの要件をきちんと研究して、それを満たすものをつくっているのだと思います。

 しかし、「コモディティ化」と言われるように、それだけでは戦えないことも多いのが現実です。

 では、最初から前提をひっくり返して、アイデアを考えてみようというのが、このアプローチ、「前提ひっくり返し発想法」です。先述した「同質化の罠」にはまらないための方法のひとつでもあります。

 例を挙げながら説明しましょう。

ひとつひとつの条件を
ひっくり返していく

 たとえば、新しい男性アイドルを発掘し売り出していく、あなたがそんなプロデューサーの役目を担ったとしたらどうするか。

 まずは、いま売れている男性アイドルの条件を列挙していきます。できるだけ要素を分解して、数をたくさん出すようにしましょう。

 ・端正な顔立ちをしている
 ・痩せている
 ・明るい性格
 ・女性だけでなく男性からも支持される
 ・オシャレ
 ・ダンスがうまい
 ・歌がうまい
 ・スポーツができる

 などなど……いくつでも出てくるでしょう。

 この中から、ひとつずつ条件をひっくり返して、そんなアイドルがいたらどうなるか考えていきます。

「端正な顔立ちをしている」をひっくり返して「クセの強い顔のアイドル」とか、「ややぽっちゃりめのアイドル」とか、「暗い性格のアイドル」とか、「女性だけに支持されるアイドル」とか、「女性には支持されないけど、男性に支持されるアイドル」とか。

 現時点で「売れる前提」とされているものを、ひとつずつ裏返して、可能性のありそうな条件を検証していきます。最後の男性だけに支持される男性アイドルなんかは、ちょっと面白そうですよね。

 芸能界は、数多くのコンセプトでプロデュースされているので、すでに使われているプロデュース手法の例も多々ありますが、ヒットする条件をたくさん出していけば、その分、切り口が見つかっていく可能性が高まります。

 強いコンセプトやアイデアは、自由に考えていいよと言われると、なかなか考え出すのが難しいものです。

制約はアイデアの母

 逆に制約が、面白いアイデアに化ける「触媒」になるときがあります。この「前提ひっくり返し発想法」は、まさにそれです。

 ヒットする条件をあえてひっくり返して、制約をつくることで、そこから新しいアイデアやコンセプトをつくる発想法です。

「制約はアイデアの母である」と言う人がいます。この「前提ひっくり返し発想法」を応用して、いつもとは違うアイデア発想を行うことにもチャレンジしてみましょう。

 たとえば、新商品発売時には必ずテレビCMを打っているけれど、それを行わないようにしてみる、とか。これまで支持されてきた機能をあえて外した上で商品企画を行ってみる、とか。

 あえて制約をつくることで、これまで考えつかなかった強いアイデアが生まれる可能性があります。

(※本稿は『言葉でアイデアをつくる。 問題解決スキルがアップ思考と技術』の一部を抜粋・編集したものです)

仁藤 安久(にとう・やすひさ)
株式会社Que 取締役
クリエイティブディレクター/コピーライター
1979年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業。同大学院政策・メディア研究科修士課程修了。
2004年電通入社。コピーライターおよびコミュニケーション・デザイナーとして、日本サッカー協会、日本オリンピック委員会、三越伊勢丹、森ビルなどを担当。
2012~13年電通サマーインターン講師、2014~16年電通サマーインターン座長。新卒採用戦略にも携わりクリエイティブ教育やアイデア教育など教育メソッド開発を行う。
2017年に電通を退社し、ブランドコンサルティングファームである株式会社Que設立に参画。広告やブランドコンサルティングに加えて、スタートアップ企業のサポート、施設・新商品開発、まちづくり、人事・教育への広告クリエイティブの応用を実践している。
2018年から東京理科大学オープンカレッジ「アイデアを生み出すための技術」講師を担当。主な仕事として、マザーハウス、日本コカ・コーラの檸檬堂、ノーリツ、鶴屋百貨店、QUESTROなど。
受賞歴はカンヌライオンズ 金賞、ロンドン国際広告賞 金賞、アドフェスト 金賞、キッズデザイン賞、文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品など。2024年3月に初の著書『言葉でアイデアをつくる。 問題解決スキルがアップ思考と技術』を刊行する。