八百長認定による解雇を不服とし、東京地裁に地位確認訴訟を起こしていた元幕内力士・蒼国来(29)が勝訴、7月に始まる名古屋場所での復帰が決定した。

 解雇されたのは、ちょうど2年前の4月13日。解雇されたのだから当然、部屋での稽古はできない。部屋には師範代の肩書を残し、髷も落とさず2年間、ジムや社会人ラグビーチームの練習に参加するなどしてトレーニングを続けてきたという。

 解雇から1年間は月給が支払われたようだが、それ以後は無給。復帰の可能性は裁判の結果に委ねられており、心が折れそうになったこともあったはずだ。それでも頑張ってこられたのは、自分は八百長はやっていないという信念があったからだろう。

 信念を貫き、土俵復帰を果たした蒼国来には拍手を送りたいし応援したいが、他の八百長認定力士の中には無念の思いを持っている者もいるのではないだろうか。

相撲協会の2年前の調査は
所詮「臭いものにフタ」ではなかったか

 2年前、八百長相撲をしたと認定され解雇された力士は蒼国来を含めて21人。この中には八百長への関与を否定し続ける力士もいた。本当に八百長とは無縁の力士もいたはずだ。が、情勢を見て引退を決断した。八百長力士の汚名を着せられたままで。蒼国来との違いは裁判に訴える決断をしたかどうか。今は誰もが新たな人生を送っているだろうが、蒼国来復帰のニュースを無念の思いで見た者もいるはずである。

 当時、相撲協会は「大相撲存亡の危機」と受け止め徹底調査をするとしていたが、蒼国来の一件を見ると、本当に徹底的に調べたのか疑問が生じる。

 この八百長問題が表面化したのは2011年2月。警視庁が相撲界で起こった野球賭博問題を捜査している際、押収した力士の携帯から八百長を示すメールを発見。その内容を公表したことから発覚した。それまでも週刊誌などが八百長の存在を書いてきたが、その度に相撲協会は完全否定を続けた。しかし、警視庁がメールという動かぬ証拠を提示したからには相撲協会も認めざるを得なくなった。