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『戦略学』著者が語る
「人間の心理と知性を制するものが市場戦略を制す」

【第29回】 2008年8月27日
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戦略学
菊澤 研宗著 ダイヤモンド社刊
定価2520円(税別)

 イギリスの科学哲学者カール・ライムント・ポパーは、科学的知識を発見する方法やその論理的構造を研究する過程で、人間は、物理的・肉体的な世界のほかに、人間の心の状態の世界、そして人間だけが持つ知性によって理解できる知識や価値の世界が実在していることを発見した。

 この三次元的な世界観に対するポパーの着眼は、今日、我々に人間の五感では測ることのできない心理と知性を理解することの重要性を教えてくれる。

 現代のビジネス界では、選択と集中の原理に基づいて最適な資源配分を行う必要性が叫ばれている。しかし、企業の生存の可否は、最終的に環境や社会システムによって決定されてしまうのだ。

 現代企業が環境に淘汰されず、生存するためには、ポパーによって発見されたこれら三つの世界に対応した戦略アプローチを構成する「立体的大戦略」が必要となる。本書は、これに基づき、企業の生き残り戦略を論じるものである。

従来の経営戦略論の限界

 経営学上、戦略が本格的に研究されるようになったのは比較的最近のことである。1980年代に、マイケル・E・ポーターが産業組織論との関わりで企業の競争戦略論を発表してから、資源ベース理論、ブルー・オーシャン戦略など様々な経営戦略論が論じられてきた。

 しかし、これらはいずれも物理的世界、つまり五感で理解できる世界の実在性だけを前提にした、力と力をぶつけ合う一元的な戦略にすぎない。そして、その理論的基礎の一つは、新古典派経済学にある。

 新古典派経済学では、人間は完全合理的に行動すると仮定されるので、優れた新商品が発売されれば、消費者は商品のわずかな優劣を完全に識別し、すぐにそれに乗り換えることになる。

 そして、新商品への需要が高まれば、市場のメカニズムによって価格が上昇し、その結果、新商品を製造・販売する企業は利益を獲得して生き残る。一方、既存商品の需要は減少し価格が低下するので、これを製造・販売する企業は生産コストを回収できず、累積赤字を解消できなければ淘汰される。

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