4月8日付の「日本経済新聞(日経新聞)」の朝刊に、「混合診療、出口見えぬまま10年」という記事が掲載された。この記事は、日経新聞のネットサイトでも閲覧できるようになっており、4月24日現在でも公開されている(http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS25013_X20C13A3SHA000/)。
記事では、白内障の手術を受けた名古屋市在住の女性(70歳)が、眼科医の勧めで健康保険の効かない多焦点レンズを利用したが、混合診療が認められていないために高額な負担を強いられ、「渋々大金を払った」というケースが紹介されている。
こうしたケースを出すことで、混合診療を原則禁止にしている日本の医療制度が硬直的だと批判したいのだろうが、この記事は正確さを欠いており、読者に誤解を招く恐れが多分にある。
というのも、多焦点レンズを使った白内障手術は、先進医療が適用されており実質的な混合診療が認められているからだ。
多焦点レンズは両目で約70万円
たしかに健康保険はきかないが…
白内障は、おもに加齢が原因で起こる目の疾患で、水晶体が濁ることで物がぼやけたり霞んだりして視力が低下する。
白内障の手術は、以前は濁った水晶体を取り除くだけだったが、現在は取り除いた水晶体の部分に、人工の眼内レンズを挿入するのが標準的な治療で、視力回復の効果が高い治療法だ。手術や検査など一連の治療にはすべて健康保険が適用されるので、誰でも少ない負担で手術を受けられる。
健康保険が適用されている眼内レンズは、単焦点レンズというものだ。これは焦点の合う範囲が限定されているので、遠くを見たり、手元を見たりするときにはぼやけることもある。だが、眼鏡をかければ視力の矯正はできるので、日常生活に支障はない。
保険適用の眼内レンズを使った場合の医療費の総額(通院治療の場合)は、両目で17万~18万円。70歳以上で一般的な所得の人の窓口負担は1割なので、自己負担額は2万円以内。窓口負担割合が3割の人でも5~6万円だ。