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被災者はどこに住むべきか~宮城県名取市閖上のいま

“閖上の悲劇”を生んだ中学校への避難誘導で新事実
2年近くも隠された「公民館長の証言」とは

池上正樹 [ジャーナリスト],加藤順子 [フォトジャーナリスト、気象予報士]
【第6回】 2013年4月26日
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 津波で壊滅した地域に、再びまちづくりを進めようとして問題になっている宮城県名取市の閖上地区現地再建案。計800人近くが参加した3月30日の住民説明会の模様は、前回の記事で紹介したとおりだ。

 その閖上地区で多くの犠牲者を出す舞台となったのが、市の指定避難所だった「閖上公民館」だ。当日、公民館に避難してきた人たちは突然、別の指定避難所の「閖上中学校」に改めて移動するよう誘導され、移動途中に津波にのみこまれた。

 津波が押し寄せるまで、閖上公民館でいったい何があったのか。そしてそこで何人が亡くなり、最終的に何人助かったのか。事実の整理はいまだについていない。

 市はこの2年間、公民館での被害の規模やその原因をどの程度把握するよう努めてきたのか。公民館の管理部局である市教育委員会に問い合わせたところ、震災当時の館長への聞き取り記録が残されていたことが分かった。

多くが犠牲になった中学校への避難は
「消防車」からの指示だった

 その「閖上公民館の被災時状況について(報告)」と題された資料は、当時の館長が2011年5月13日に、教育委員会の生涯学習課課長に語ったというものだ。今年4月1日付けで、初めて私たちに情報開示された。

 元館長が語った、地震発生から津波襲来までの約1時間5分のできごとは、すべて箇条書きで、以下の通りだ(番号のみ筆者による)。

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「東日本大震災(2011年3月11日)の閖上公民館の状況について」という資料の一部。当時の館長への聞き取り内容が箇条書きとなっている
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1.災害当日は館長、労務技師、社会教育補助員が館内にいた。事務長は年休を取得していたが、午後3時20分ごろ到着した。

2.地震後、施設内安全点検のため、館内の住民を前庭に誘導した。

3.停電・館内の無線機不通

4.津波の襲来に備え避難してきた住民を2階に誘導

5.被災者の受入準備に当たる。(乾パン、炊き出し用釜、発電機、簡易トイレなど)

6.名取市消防車が、働く婦人の家の東側の道路に停車した。避難指示のため到着した名取市消防車から、閖上公民館は大津波に対応できないため、閖上中学校に避難移動するよう指示を受けた。指示の後、巡回広報のため移動した。

7.急遽、住民を誘導し直すことになった。

8.避難者はそれぞれ閖上中学校へ移動し始めたが、公民館南の築港線は既に渋滞し自家用車での移動は不可能となっていたので、徒歩での移動を呼びかけた。

9.避難者のうち、寝たきり老人、車椅子の住民をグランドに運びおろし移動手段を検討していたところ、午後3時50分頃想像を絶する大津波が来襲した。

10.消防分団長が、津波が来ると走ってきた。職員と住民により、寝たきり老人、車椅子の住民を2階に運び上げた。

11.その後、事務長の姿が見えないことに気付いた。(後日死亡を確認した)

12.翌日3月12日、自衛隊により館内避難者の救出が開始された。

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池上正樹 [ジャーナリスト]

通信社などの勤務を経て、フリーのジャーナリストに。主に「心」や「街」を追いかける。1997年から日本の「ひきこもり」界隈を取材。東日本大震災直後、被災地に入り、ひきこもる人たちがどう行動したのかを調査。著書は『ひきこもる女性たち』(ベスト新書)、『大人のひきこもり』(講談社現代新書)、『下流中年』(SB新書/共著)、『ダメダメな人生を変えたいM君と生活保護』(ポプラ新書)、『あのとき、大川小学校で何が起きたのか』(青志社)など多数。TVやラジオにも多数出演。厚労省の全国KHJ家族会事業委員、東京都町田市「ひきこもり」ネットワーク専門部会委員なども務める。YAHOO!ニュース個人オーサー『僕の細道』

 

加藤順子 [フォトジャーナリスト、気象予報士]

気象キャスターや番組ディレクターを経て、取材者に。防災、気象、対話、科学コミュニケーションをテーマに様々な形で活動中。「気象サイエンスカフェ」オーガナイザー。最新著書は、ジャーナリストの池上正樹氏との共著『あのとき、大川小学校で何が起きたのか』(青志社)。『ふたたび、ここから―東日本大震災・石巻の人たちの50日間』(ポプラ社)でも写真を担当し、執筆協力も行っている。他に、共著で『気象予報士になる!?』(秀和システム)。最新刊は『石巻市立大川小学校「事故検証委員会」を検証する』(ポプラ社)。
ブログ:http://katoyori.blogspot.jp/


被災者はどこに住むべきか~宮城県名取市閖上のいま

東日本大震災の津波で700人以上が亡くなった宮城県名取市閖上(ゆりあげ)地区では今、どこに町を再建するかを巡り、住民と市長・行政の間で大きな隔たりが生まれている。この連載では、閖上地区を具体例としながら、震災から2年経った今だからこそ見えてきた被災地の直面する問題を明らかにする。 

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