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被災者はどこに住むべきか~宮城県名取市閖上のいま

1年ぶりの閖上地区・住民説明会に800人
住民軽視で進む名取市「現地再建策」の中身

加藤順子 [フォトジャーナリスト、気象予報士]
【第5回】 2013年4月15日
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1年ぶり開かれたという説明会は満席に
Photo by Yoriko Kato

 宮城県名取市が進める閖上地区の現地再建案が、揺れている。

 市は3月30日、閖上地区の復興まちづくり案の住民説明会を1年ぶりに行った。会場となった市文化会館には大勢が詰めかけて座れない人も出たほどで、昼の部と夜の部とで計800人近くが参加した。

 市長をはじめとする市側からの計画の説明に対し、この日、住民側から出された質問や意見の多くは、市が進める現地再建計画案への疑問や、住民軽視で進められてきた合意形成のプロセス自体を批判する内容だった。

 「1年間、市から何の話もなかった」
 「県が災害危険区域としたところに、もう一度町を作ると言い張る市側の感覚がわからない」
 「現地再建案への反対が賛成を大幅に上回っているのに、少ない方の意見を採るのは民主主義といえるのか」」
 「まるで決定事項のように聞こえるが、そうなのか」

 会場からは、苛立ちと不安とが混ざったような声が次々と上がり、そのたびに拍手がわき起こった。

生活拠点はどこに?土地の売却価格は?
1年ぶりの説明会で戸惑う住民たち

 2011年3月11日、閖上地区には10メートルを超える津波が襲った。第1回でも紹介したが、甚大な被害を受けた閖上を同じ場所で再興させようという市の案に首をかしげる地元住民は少なくない。

 市はこの日の説明会で、貞山運河の西側(閖上字と閖上1~2丁目)の一部を平均3メートルかさ上げして現地を再建する「土地区画整理事業案」(120ヘクタール)と、その区域内に住宅団地や災害復公営住宅を建設する「防災集団移転促進事業案」を併用して進めることを紹介。同時に、かさ上げの予定範囲が70ヘクタールから45ヘクタールに縮小されたことも説明した。

 市はさらに、この日の参加者が最も関心を寄せていた宅地の取り扱いについて説明した。

 資産の行く末については、生活設計の問題とセットになる。多くの住民にとって、できる限り早くに決着を付けたい課題だ。

 市によれば、閖上に土地を所有し続ける場合、かさ上げ後の区画整理で1割ほど減歩されるが、居住区域内であればできるだけ元あった場所に換地をしていくという。

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加藤順子 [フォトジャーナリスト、気象予報士]

気象キャスターや番組ディレクターを経て、取材者に。防災、気象、対話、科学コミュニケーションをテーマに様々な形で活動中。「気象サイエンスカフェ」オーガナイザー。最新著書は、ジャーナリストの池上正樹氏との共著『あのとき、大川小学校で何が起きたのか』(青志社)。『ふたたび、ここから―東日本大震災・石巻の人たちの50日間』(ポプラ社)でも写真を担当し、執筆協力も行っている。他に、共著で『気象予報士になる!?』(秀和システム)。最新刊は『石巻市立大川小学校「事故検証委員会」を検証する』(ポプラ社)。
ブログ:http://katoyori.blogspot.jp/


被災者はどこに住むべきか~宮城県名取市閖上のいま

東日本大震災の津波で700人以上が亡くなった宮城県名取市閖上(ゆりあげ)地区では今、どこに町を再建するかを巡り、住民と市長・行政の間で大きな隔たりが生まれている。この連載では、閖上地区を具体例としながら、震災から2年経った今だからこそ見えてきた被災地の直面する問題を明らかにする。 

「被災者はどこに住むべきか~宮城県名取市閖上のいま」

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