「『日本とは戦いたくない』。これが中国の本音だ」――FRS・フランス戦略研究財団アジア部門長ヴァレリー・ニッケ氏は、こう言い切ります。2006年刊行の著書「中国と日本の衝突」で日中は冷戦に入っているとし、両国の緊張が高まる可能性を示唆していた彼女をはじめ、17世期以来の伝統を誇り西洋におけるシノロジー(中国学)の中心地となっているフランスの専門家たちは、尖閣問題と日中開戦リスクをどう分析しているのでしょうか。

フランス市民の注目を集める
中国の海洋進出と尖閣問題

「中国VSアメリカ~衝突の世紀」(アラン・フランショ著)

 「中国VSアメリカ~衝突の世紀、アジアで第三次世界大戦は勃発するのか?地域の支配者中国と世界の保安官アメリカ、両国を分割する広大な太平洋を挟み互いににらみあう」――フランス国防高等研究所主催、アラン・フラション講演(ル・モンド元編集長、「中国VSアメリカ~衝突の世紀」の著者)

 「中国と日本~両国間の緊張は洋上対決の前兆か?それとも、日本を犠牲にした中国とアメリカの新しい力の均衡づくりを意味するのか?」――フランス・四川省交流協会主催、ブリュノ・ビローリ講演(ヌーベル・オブゼルバトワール元北京・東京特派員、「石原(莞爾)、戦争を引き起こした男」の著者)

 「中国は、兵法三十六計の声東撃西を実践しているにすぎない(東シナ海の尖閣諸島に攻めると思わせて世界の注目を集め、その隙に南シナ海の南沙諸島や西沙諸島を領有する)」――ジャン・ヴァサン・ブリッセ、ル・モンド紙記事(IRIS・国際関係戦略研究所・研究部長)、

 「中国と日本の戦争はありえない」――クロードメイヤー、ル・モンド記事(「金融危機後のアジアのリーダーになるのは中国か日本か」の著者で、パリ政治学院教授)

 このようにフランスでも、昨年9月の日本政府による尖閣諸島国有化以降、中国の海洋進出と尖閣問題も含めた日米の防衛戦略に関し、講演会、セミナー、新聞、テレビ等を通じた専門家(国際政治・外交・軍事・歴史・経済、人類学・中国学等)の発言が増えています。これに伴い、東アジア情勢に対する人々の関心がにわかに高まっています。

 今回は、こうした専門家の中から、ヴァレリー・ニッケ氏への取材を中心にご紹介します。