「軍事関連支出は公表国防費の1.26倍ないし2倍」との推定はまず妥当だろう。どの国でも国防予算に含まれていない軍事関連費はあるもので、1990年代、ソ連が崩壊した後にアメリカで、「次の脅威となるのは日本だ」との論が一時流行した際には、「日本の防衛費がGDPの1%以下、というのはウソ。実は2%だ」と言われた。米国では退役軍人の年金や、傷病兵の医療費は退役軍人庁が支出し、国防予算に含まれているが、日本では自衛官の年金等は国家公務員共済組合、旧軍人の恩給は厚生労働省が負担している、とか、海上保安庁の経費、当時の科学技術庁や東大の宇宙開発などの費用、などなどを積み上げて「GDPの2%」説を唱えたのだ。

 日本脅威論を書きたいアメリカの学者や研究所の研究員、記者たちがあらかじめ結論を決め、裏付けを取ろうとして次々に私を訪ねて来たから、私は「アメリカでも州兵(事実上の予備役兵、イラク戦争でも動員)の経費の一部は、国防総省予算ではなく州が負担している。海外基地確保のための戦略的経済援助は国務省予算に入っている。NASAのプロジェクトには軍事目的のものも多い。CIAなど軍以外の情報機関の経費も軍事関連支出ではないか」などと応戦に努めたものだった。「軍事関連支出」を広義に取れば、空港、港湾、道路、通信網の建設や病院、消防、商船隊の維持、工業に対する助成から、食糧自給率の向上や燃料備蓄、はては教育、健康保険制度までが国の軍事能力を高める効果を持つから、線引きは難しい。

国防予算増=軍事力増大ではない

 経済成長にともなって国防予算が増えても、それに比例して軍事力が増大するものではない。日本の場合、防衛予算が1960年からの24年で18.7倍になったが、自衛隊の戦力が18倍になったわけではなかった。物価が上昇するだけではなく、国が豊かになり、国民の生活水準が向上すれば、民間にさほどひけを取らないように将兵の給料のほか、毎日の食事や兵舎、官舎、衣服などを改善する必要が生じる。

 また兵器の近代化、特にIT化によって兵器の単価は急騰した。日本の例では最初の超音速戦闘機F104は1機約4億円だったが、次のF4は20億円余、現在のF15は80億円、今後入るF35は最初の4機を1機(予備部品付き)102億円で契約したが、米国の2014年度国防予算案では1機1億9000万ドルになる、という。維持費の大部分は部品代だから、航空機の単価の上昇は維持費の上昇にも直結する。このため多くの国の空軍も機種更新のたびに機数が減る傾向にあるが、中国空軍の数的減勢は極端で1980年代末には戦闘機・攻撃機約4500機を擁したが、今日では約1500機に減少、うち800機はソ連で1950年代に初飛行したMiG19、MiG21を中国で改装した物など、ひどい旧式だ。

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初の空母も波があると艦載機が発進できない

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