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インキュベーションの虚と実

エンタープライズ市場の時代がやってきた!
クラウドやUXの進化で新たに生まれるニーズとチャンス

本荘修二 [新事業コンサルタント]
【第27回】 2013年5月27日
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事例3:ServiceNow(時価総額50億8000万ドル)

 世界1300社で実績のあるクラウドサービス「ServiceNow」は、サービスデスクなどITインフラをサポートするITサービスマネジメントをSaaSで実現する。エンドユーザーからのリクエストや問い合わせ、その対応状況を集約してレポートし関係者と共有することで、サービス改善を支援できる。業務プロセスの標準化と自動化で、対応の迅速化と改善を図るサービスだ。

 この様に、ビッグデータ、セキュリティ、ITインフラといった、周知の分野の問題を解決するニーズは大きい。この3つに限らず、イノベーションの機会は広くある。例えば、Twillioは、ソフトウェア開発者がWebサービスAPIを使って通話やテキストメッセージの送受信を実装することを可能にするクラウドによるサービスを提供している。この様に、B2Bにおけるチャンスとニーズは至る所に転がっている。

ソーシャルウェブの普及がもたらす
UXの進化と生まれる新たなニーズ

 エンタープライズ市場が転換期を迎えている理由は、これだけではない。ソーシャルウェブに代表されるウェブの進化が背景にある。

 まず、ユーザー・エクスペリエンス(UX)の革新だ。

 「コンシューマーはソーシャルウェブなど、素晴らしいユーザー体験に恵まれるようになった。しかし、エンタープライズは立ち遅れた。会社に出勤すると、個人での体験よりも十年遅れた体験を強いられる。ユーザーは、変化を求めるよね」

 2012年6月にマイクロソフトが12億ドルで買収を発表した社内ソーシャル・ネットワーク・サービスのYammerで、初期バージョンをデザインしたエリオット・ロー(Elliot Loh)氏は話す。コンシューマーでイノベーションが進みユーザーは素晴らしい体験を積み重ねていた一方で、エンタープライズではイノベーションが停滞していた問題に注目し、ロー氏はその解決を図った。また、ロー氏は、Yammerに限らず、こうしたUXの視点からの革新のポテンシャルは大きいと指摘する。

 また、ウェブの進化に伴う、企業ニーズの変化がある。

 ソーシャルウェブへの対応やその活用の企業ニーズは日に日に高まっている。フェイスブックをはじめとするソーシャルウェブのマーケティング活用のWildfire(昨年Googleに約2億5000万ドルで買収された)など米国ではこの分野のスタートアップは多い。日本でもアライド・アーキテクツほか、いくつも同分野のスタートアップはある。

 この様に、変化はチャンスをもたらす。ウェブの進化が、ユーザー・エクスペリエンス進化のニーズを高め、また新たなニーズを生んだのである。

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本荘修二

新事業を中心に、日米の大企業・ベンチャー・投資家等のアドバイザーを務める。多摩大学(MBA)客員教授。Net Service Ventures、500 Startups、Founder Institute、始動Next Innovator、福岡県他の起業家メンター。BCG東京、米CSC、CSK/セガ・グループ大川会長付、投資育成会社General Atlantic日本代表などを経て、現在に至る。「エコシステム・マーケティング」など著書多数。訳書に『ザッポス伝説』(ダイヤモンド社))、連載に「インキュベーションの虚と実」「垣根を超える力」などがある。


インキュベーションの虚と実

今、アメリカでは“スタートアップ”と呼ばれる、ベンチャー企業が次々と生まれている。なぜなら、そうした勢いある起業家たちを育てる土壌が整っており、インキュベーターも多く、なにより、チャレンジを支援する仕組みが存在するからだ。一方の日本はどうなのだろうか。日米のベンチャー界の環境の変化や最新のトレンドについて、25年にわたってベンチャー界に身を置いてきた本荘修二氏が解説する。また日本でベンチャーが育ちにくいと言われる背景を明らかにし、改善するための処方箋も提示する。

「インキュベーションの虚と実」

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