米国で大学授業料が高騰している。大学生の子どもを持つ親と話すと異口同音にその話題になる。消費者物価指数の「大学授業料」の項目を見ると、現在は20年前に比べると3.2倍。インフレを考慮した実質で見ても1.9倍である。

 ニューヨーク郊外に住む知人の息子が昨年、ある有名大学に入学した。1年間の授業料と寮費は計5.8万ドルだった。高校時代の成績がよかったので、1万ドルの値引きがあったそうだが、それでも約500万円だ。

 その大学の入学案内には、卒業生が就職して1年後の平均年収、10年後の平均年収の調査結果が示されている。先行きこれだけの収入が得られるのだから、大学に支払う授業料は十分に見合いますよ、という説明なのだった。

 とはいえ、親が年500万~600万円をポンと払える家庭は一部なので、学生ローンに頼る人は多い。しかし、これが今、深刻な社会問題となっている。35歳未満の場合、借金残高に占める学生ローンの比率は2001年は7%だったが、10年は15%へと倍増した。

 米「ニューヨーク・タイムズ」紙(5月11日)に、33歳の高校教師のケースが載っていた。彼の学生ローン残高は4.5万ドル、親への借金は4万ドル。その返済に追われ、車が持てない、結婚できない、家が持てないという状況に陥っている。彼と同様に、大学卒業時の債務が大きくて、住宅購入時期が遅れるケースが増えている。