
ドナルド・トランプ米大統領の政策による経済的影響は、懸念されていたほど深刻ではないかもしれない。
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が経済予測の専門家を対象に四半期ごとに実施している調査によると、エコノミストは、3カ月前の自身の予想に比べ、経済成長や雇用の伸びが強まり、リセッション(景気後退)リスクが低下し、インフレ率が鈍化すると予想している。
その理由はこうだ。WSJの前回調査は、米国の主要な貿易相手国・地域に対して、トランプ氏が極めて高率の関税を課すと脅しをかけていた真っ最中に実施された。トランプ氏はその後間もなく、一部関税の適用を停止した。
この改善したムードが続くかどうかはまだ分からない。トランプ氏は先週、ブラジル、カナダ、メキシコ、欧州連合(EU)など多数の貿易相手国・地域に対し、8月1日から関税を大幅に引き上げると通告した。
エコノミストの経済見通しは前回調査からは若干改善したものの、なお比較的暗い内容だ。その理由は多分、貿易を巡る不透明感が根強いことや、これまで経済成長の低迷が続いていることだ。
今年10-12月期のインフレ調整後の国内総生産(GDP)伸び率に関するエコノミスト予想は、平均で前年同期比1%だ。これは4月時点の予想(0.8%)を上回っているが、1月時点の予想の半分にとどまっている。2026年にはGDP伸び率は1.9%に回復すると予想されており、これは以前の調査結果からほとんど変わっていない。
エコノミストは平均で、今後12カ月の間にリセッション入りする確率が33%だと予測した。これは4月の45%を下回るが、1月の22%を上回る。
全米レストラン協会(NRA)のチーフエコノミスト、チャド・ムートレイ氏は「さまざまな逆風にもかかわらず、米国経済は強い耐性を示している」とし、「消費者は支出を続けているが、ムードは明らかに大胆なものから慎重なものへと変化している」と述べた。
この調査では7月3~8日にかけて、ウォール街の銀行から大学、小規模のコンサルティング会社に至るまでの組織に所属するエコノミスト69人から回答を集めた。全員がすべての質問に回答したわけではない。