明治時代に数多くの偉業を成し遂げた福沢諭吉。下級武士から這い上がり、渡欧米経験をもとに日本を文明開化へと導いた一人だ。彼の人生から垣間見えるのは、思い描いた未来を実現するために、今この現実世界で着実に努力を重ねる、したたかな「過渡期戦略」である。連載最終回は、未来を築くためのヒントを歴史から学ぶ。

未来への道:
わずか20秒で携帯電話を充電できる驚異の発明

 カリフォルニアに住む女子高生のイーシャ・クハレさんが「インテル国際学生科学フェア」で入賞したニュースが、先日報道されましたが、受賞した製品はなんとわずか20秒程度で携帯電話の充電が可能になる、まさに画期的な技術でした。

 ノートパソコンや電気自動車にも応用が可能とのことで、産業界からも大いに注目が集まっているそうです。

 モバイル機器が発達した現在、バッテリの残量が気になる人は多いと思います。これまで移動中でバッテリが切れる直前に、充電できるカフェを探して彷徨った私たちも、わずか20秒で充電が完了するなら状況は大きく改善される期待が持てます。

 充電がネックとなっているのは、最近街中で見かける電気自動車でもまったく同じでしょう。充電時間が大幅に短縮されるなら、一回の移動距離の短さは日常使用で問題にならなくなり、販売を確保しながらさらなる技術進歩の「余裕」を得ることが可能になります。

 この「インテル国際学生科学フェア」の素晴らしいところは、多くの学生の目を科学技術に向けさせて刺激を与え、彼らの才能を最大限引き出しているところです。その意味で、個々の才能と同じ程度「環境こそが」人の可能性を引き出す舞台となるのでしょう。

 人を育む舞台という意味では、福沢諭吉が創設をした「慶応義塾」も先進的・啓蒙的な学問を共に学ぶ場を創る目的で生み出されており、明治初期から優れた人材を輩出しています。

 優れた人を育てる場、個の才能を引き出す場を創る作業は、これから日本国内でもさらに加速していくのではないでしょうか。「場」の創造は、幕末明治初期の「私塾」にも見ることができますが、世界規模で大転換期を迎えている現在、企業であるインテルの「国際学生科学フェア」が、社会を変える可能性を秘めた発明を高校生から生み出す舞台となったことは、私たち日本人にも学ぶべき点が多い、素晴らしい成功事例だと思います。