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莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見

刑務所の写真にはアフリカ系の人々が……
急増する中国の「三非人員」

莫 邦富 [作家・ジャーナリスト]
【第157回】 2013年5月30日
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 2枚の写真を前に、私はしばらく言葉を失った。予想していたとは言え、すでにここまで事態が進行しているという現実を見せつけられると、やはり一種の驚きを覚えてしまう。

急増する「三非」

 そのうちの1枚は、広東省東莞の刑務所内部の写真だ。警察の監視のもとで整列進行をしている囚人たちの様子が写っている。写真の内容自体に珍しいものは何一つない。しかし、写っている人物たちをよくよく見つめると、驚かずにはいられなかった。その囚人たちはなんと全員がアフリカ系なのだ!中国の刑務所に、アフリカ系の犯人がいっぱい、ということを想像するだけで、びっくりしてしまう。

 もう1枚の写真は、厳密に言うと、2枚一組となっているものだ。数十名の若い女性が列に並んで警察の前で何かの手続きをしているところが撮影されたものである。中国からベトナムに強制送還された「三非」と呼ばれるベトナム人、と写真のキャプションがそう説明している。

 「三非」とは、非合法入国、非合法滞在、非合法就労を意味する「三非人員」の略語だ。つまり不法入国・滞在・就労の外国人のことを言う。約3年前の2010年8月19日に、本コラムでは、「『蛇頭』の絶版に見る中国労働力市場の変化~内陸部にまで広がる『三非』問題」と題するものを書いた。

 その中で、1994年に私が密航者や蛇頭に焦点を当て出版した『蛇頭』がロングセラーとなり、私の多くの著書のなかでも「孝行息子」の一冊となっていること、蛇頭という中国から移植してきた言葉も次第にスネークヘッドからジャトウと読むように変わり、知らず知らずの間に、新しい日本語として日本社会に定着していった、といったことを振り返った。

 しかし、世の中に終わらない宴はない。これほど売れていた『蛇頭』も次第に売れなくなり、やがて絶版となった。代わりに今度は外国の蛇頭が、外国人の密航者を中国に連れてくるような現象が中国各地で広がっている。これまでは外国で中国人密航者が強制送還されていたが、今やその逆バージョンが中国で起きている。2枚目の写真はまさにそのことを物語っている。

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莫邦富(モー・バンフ) [作家・ジャーナリスト]

1953年、上海市生まれ。85年に来日。『蛇頭』、『「中国全省を読む」事典』、翻訳書『ノーと言える中国』がベストセラーに。そのほかにも『日中はなぜわかり合えないのか』、『これは私が愛した日本なのか』、『新華僑』、『鯛と羊』など著書多数。


莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見

地方都市の勃興、ものづくりの精度向上、環境や社会貢献への関心の高まり…中国は今大きく変わりつつある。先入観を引きずったままだと、日本企業はどんどん中国市場から脱落しかねない。色眼鏡を外し、中国ビジネスの変化に改めて目を凝らす必要がある。道案内人は日中を行き来する中国人作家・ジャーナリストの莫邦富氏。日本ではあまり報道されない「今は小さくとも大きな潮流となりうる」新発見を毎週お届けしよう。

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