2020年夏季五輪実施競技争いに勝ち残る競技はどれか。突如としてこの話題でヒートアップすることになったのが我が日本である。

 5月30日に行われた国際オリンピック委員会(IOC)理事会で、8競技の中から最終候補に残ったのは「レスリング」、「野球・ソフトボール」、「スカッシュ」の3競技。いうまでもなく、このうちの2つ、レスリングと野球・ソフトボールは日本にとってメダル有望競技であり、多くの人が実施を熱望する競技だ。ともあれ一般のスポーツファンは馴染みの薄いスカッシュ以外ならどっちでもOK、という感じだろうが、両陣営の関係者は選手のことや競技の未来を考えたら絶対に負けられない争いである。最終決定が下される9月8日のIOC総会まで、あの手この手のアピール合戦が見られることになりそうだ。

両競技でメダルが期待でき
国内での人気も高い日本

 もちろん日本以外にも両競技が盛んな国はたくさんある。レスリングはロシアや東欧・北欧諸国、アメリカやキューバ、アジアではイランなどが盛んだし強い。野球は北中米とアジアの極東諸国、ソフトボールはアメリカ、オーストラリア、中国のレベルが高い。両競技とも盛んということではアメリカとキューバも該当するが、両国には他にもメダル量産競技はいくつかあり、ことさら両競技の五輪実施を熱望している風でもない。どちらの競技にも国民から同様の期待が集まり、実施してほしいと思っている国はまさに日本なのだ。

 しかし、30日のIOC理事会の決定まで、よもやこんな展開が待っているとは思ってもみなかった。それまでのメディアの報道も人々の関心も、レスリングが残るかどうかに絞られていたといっていい。

当コラムでも書いたが、今年2月のIOC理事会でレスリングが夏季五輪の実施競技から除外されたことは世界中を驚かせた。レスリングは古代オリンピックの流れを汲むうえ、近代オリンピックでも第1回から採用された伝統競技。除外されるわけがないとスポーツ関係者の誰もが思っていた。