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相川俊英の地方自治“腰砕け”通信記

人里離れた山奥に「奇跡の村」が出現するまで
健全財政で少子化知らず!下條村の驚くべき“村民力”

相川俊英 [ジャーナリスト]
【第70回】 2013年6月4日
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やっぱり東京からは遠かった
4年ぶりに訪れた山奥の「奇跡の村」

 全国の自治体関係者が「奇跡の村」とまで呼ぶ、小さな山村に行ってきた。長野県下條村だ。これまで何度も訪れており、今回は4年ぶり。やっぱり、東京からは遠かった。

 長野県最南端の下伊那郡の中央に位置する下條村の人口は、約4100人。飯田市から車で30分ほどだが、その飯田市まで新宿から高速バスで約4時間20分かかる。タクシーで村役場に向かうと、運転手さんが「ここは交通の便が悪く、本当に陸の孤島です」と、自嘲気味に語った。

 下條村の約7割を山林が占め、平坦地は極めて少ない。宅地面積はわずか3%ほどで、天竜川右岸の河岸段丘の上に集落が散在する。傾斜地ばかりで農地も少なく、村の主産品は果樹やそばといったところだ。

 村内に大きな企業や事業所があるわけでもなく、俳優の峰竜太さんの出身地として知られていることくらいだ。村の税収は乏しく、財政力指数0.218(2011年度)。つまり、様々な悪条件に苦しむ典型的な山村の1つである。

 そんな下條村が「奇跡の村」と呼ばれるようになって、実は、久しい。村として早くから少子化対策に乗り出し、成果をあげてきたからだ。全国有数の高い出生率を誇り、それを維持し続けているのである。

 たとえば、2011年の合計特殊出生率である。全国平均が1.39人なのに対し、下條村は1.92人(村試算)を記録している。

 厚生労働省が公表した2040年時点での地域別将来推計人口でも、下條村の数値は際立っている。全国のほとんどの自治体が大幅な減少を推計された中で、小幅な減少率に留まったのである。2010年比でマイナス8.2%と、ハンディを乗り越えて大健闘していると言える。大都市圏のベッドタウンの自治体と、肩を並べる数値である。

 こうしたことから、いつしか、人口減に苦しむ自治体関係者などが下條村を「奇跡の村」と呼ぶようになった。そして、その秘訣を学ぼうと、列をなして下條村に行政視察するようになったのである。今に始まった話ではなく、数年前から続く現象だ。

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相川俊英 [ジャーナリスト]

1956年群馬県生まれ。放送記者を経て、1992年にフリージャーナリストに。地方自治体の取材で全国を歩き回る。97年から『週刊ダイヤモンド』委嘱記者となり、99年からテレビの報道番組『サンデープロジェクト』の特集担当レポーター。主な著書に『長野オリンピック騒動記』など。


相川俊英の地方自治“腰砕け”通信記

国政の混乱が極まるなか、事態打開の切り札として期待される「地方分権」。だが、肝心の地方自治の最前線は、ボイコット市長や勘違い知事の暴走、貴族化する議員など、お寒いエピソードのオンパレードだ。これでは地方発日本再生も夢のまた夢。ベテラン・ジャーナリストが警鐘を鳴らす!

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