「フラガール」のイメージが強く、東日本大震災の「被災地」としての印象が薄い福島県いわき市。そんな土地で「被災地ツアー」を企画する人々は、どんな知恵と工夫で「被災地いわき」をプレゼンしているのだろうか。(取材・文・撮影/亀松太郎チーム)

「マイナー被災地」。東日本大震災後の福島県いわき市にキャッチフレーズをつけるとすれば、こういった感じだろうか。

震災時のいわき市久之浜の様子を伝える写真の前で、自らの被災体験を語る佐藤テルイさん  
Photo by Takashi Higuchi

 南三陸や陸前高田、女川といった、マスコミでよく取り上げられる土地と比べ、被災地としてのイメージは正直いって薄い。そんなマイナー被災地でも、「実像を知ってもらいたい」と来訪者向けのツアーを企画し、「被災地いわき」をプレゼンしている人々がいる。津波被災と放射能の影を強く印象づける作戦とは何か。「マイナー」を逆手にとり、そこにはいわきの今をリアルに感じさせる工夫があった。

各家庭が線量計を持っている
「異常さ」を知ってもらいたい

 いわき市には、東日本大震災で甚大な被害を受けた沿岸部をめぐり、被災地ガイドの案内に耳を傾ける「スタディツアー」が3種類ある。どのツアーも観光バスで移動しながら、震災によって何が起こり、いまどのような状態になっているのかを、参加者の目や耳を通して、じかに感じ取ってもらうことを目的としている。

 そのうちの一つは、震災後にいわき市に誕生したNPO「ふよう土2100」が主催しているツアーだ。キャッチコピーは「知って、感じて、考える」。地震や津波の被害の大きさを知ってもらうだけでなく、市民の暮らしに入り込んだ原子力災害の影を実感してもらうことを重視している。