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大震災から2年目の「今」を見つめて

被災地・福島をめぐってすれ違う課題【前提編】
――社会学者 開沼 博

開沼 博 [社会学者]
【第2回】 2013年3月7日
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震災2年で何も変わらない日本社会の構造

 2013年、正月。耳に入ってくるのは、鳥の鳴き声と近くの通りを通過する自動車の音くらい。気温こそ低いけれども、陽の光は地面に真っ直ぐに差し込み、空も穏やかに見える。

 もちろん、そこに漂う空気には味も香りもない。無理矢理に表現するならば、「田舎の草の匂いがかすかにする」とでも言うべきところだろうか。

震災後の光景から何も変わっていない双葉厚生病院の現在の様子
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 東京電力福島第1原発から4キロほど北西にある双葉厚生病院には、事前に確認してきた写真の配置そのままに置かれたストレッチャーやベンチ、懐中電灯や炊飯器があった。ただ、白く四角い袋だけは写真の様子と違っていた。あの日以来、風雨にさらされ続けるなかで、ビニール袋が劣化して破れたのだろうか。水に溶けたオムツのようなものが粉々になって周囲に散乱していた。

劣化した袋に時の経過を感じる
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 双葉厚生病院では、原発爆発事故によって全入院患者136名の避難を求められ、移送中に4名が亡くなった。あの日から2年が経とうとしている。

 もう2年なのか、「まだ」2年なのか――。

 その風景が象徴するように、2年経って日本社会の大きく重い構造が変わったかというと、震災直後から何も変わってはおらず、むしろ、その「何も変わらなさ」自体を私たちは忘れ始めている。その一方で、相対的な弱者に最も大きい負荷としわ寄せが集まり続けて、例えば、震災関連死は増え続けるままだ。

 震災から2年を迎えた現在、被災地・福島に転がる課題とは、いかなる課題なのだろうか。

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開沼 博(かいぬま・ひろし) [社会学者]

1984年、福島県いわき市生まれ。東京大学文学部卒。同大学院学際情報学府修士課程修了。現在、同博士課程在籍。福島大学うつくしまふくしま未来支援センター特任研究員。専攻は社会学。学術誌のほか、「文藝春秋」「AERA」などの媒体にルポ・評論・書評などを執筆。
著書に『漂白される社会』(ダイヤモンド社)、『はじめての福島学』(イースト・プレス)、『「フクシマ」論 原子力ムラはなぜ生まれたのか』(青土社)、『地方の論理 フクシマから考える日本の未来』(同、佐藤栄佐久との共著)、『フクシマの正義 「日本の変わらなさ」との闘い』(幻冬舎)『「原発避難」論 避難の実像からセカンドタウン、故郷再生まで』(明石書店、編著)など。
第65回毎日出版文化賞人文・社会部門、第32回エネルギーフォーラム賞特別賞。

 


大震災から2年目の「今」を見つめて

 この3月で東日本大震災から丸2年が経つ。被災地の報道も極端に少なくなり、当時、固く誓ったはずの「絆」「被災地に寄り添う」と言った言葉も、なぜがむなしく響く。復興はどこまで進んだのか、明日に向かうための課題は何か、そして忘れされれつつある事実はないのか。震災後2年目の「今」を見つめ直す。

「大震災から2年目の「今」を見つめて」

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