相場展開に頭を抱える者が続出
いつになく値動きが激しいドル円相場

 足もとの株式や為替などの金融市場が不安定な展開になっている。特に、為替市場のドル円レートは、大きな材料がないときでも値動きが激しくなっている。しかも、値動きの要因がわかりにくく、従来の理屈が通用しない展開になっている。為替市場関係者の中でも、難しい相場展開に頭を抱える者もあるほどだ。

 昨年から今までのドル・円相場の展開を振り返ると、昨年9月まで1ドル=70円台後半で推移していたドル・円レートは、その後、米国経済の回復期待が盛り上がったこともあり、徐々に円安方向に進み、4月上旬には1ドル94円程度になっていた。

 そこに4月4日、日銀の“異次元の金融緩和策”が発表された。それは、ドル・円の為替レートに決定的な要素として作用した。日銀がそれまでの常識を覆す大規模な資金供給を行うことによって、円安が加速されるとの思惑が台頭したからだ。

 ヘッジファンドや為替ディーラーなどは、発表直後から多額の円売り・ドル買い注文を市場に出し、ドル高・円安の傾向が一挙に進むことになった。その勢いは5月22日まで続き、ドル・円レートは103円台まで進んだ。

 ところが5月23日、前日の米国におけるバーナンキFRB議長の金融緩和策の出口に関する発言もあり、ヘッジファンドなどは積み上げてきたドル買い・円売りの利益を確定する巻き戻しのオペレーションを出した。

 その結果、株価やドル・円レートは大きく反転した。それ以降、株式も為替も値動きが荒く、明確な方向感の見えない不安定な推移が続いている。足もとの金融市場の動向を解き明かす鍵は、ヘッジファンドなど投機筋の動きにあるだろう。

 昨年の春先以降、ヘッジファンドの一部やディーラーなどは、わが国の貿易収支の赤字拡大や米国経済の回復期待を材料にして、ドル買い・円売りの持ち高を積み上げ始めていた。そうしたオペレーションは水面下で続き、秋口以降、為替市場では徐々にドル高・円安傾向が定着し始めた。