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金融市場異論百出

FRBに注目する意外な面々
市場の期待制御が難しい理由

加藤 出 [東短リサーチ代表取締役社長]
2013年7月2日
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 昨年の今ごろ、中国浙江省の寧波市でステンレスの生産に関わっている人から興味深い話を聞いた。

 中国におけるステンレス価格は江蘇省無錫市にある商品取引所でのニッケル価格が基準になる。それにステンレス工場別の品質差を考慮したプレミアムが上乗せされる。では、無錫でのニッケル価格はどうやって決まるかというと、英LME(ロンドン金属取引所)に大きな影響を受けている。

 LMEのニッケル・トレーダーたちのそのころの最大の関心事は、「FRBはQE3(量的緩和第3弾)を行うのか?」だった。FRBが供給するマネーが増えれば、LMEと無錫のニッケル価格が上昇し、つられて寧波のステンレス価格も上昇するので、バーナンキ発言は要注目とのことだった。

 数カ月後、その話を日本の商社に勤める知人に話すと、彼も似た経験を米イリノイ州でしたという。トウモロコシ農家を訪問した際、FRBの政策に強い関心を抱く農家がいた。もしQE3を開始するなら、トウモロコシ相場は上昇するはずだから、トラクターの買い替えを行うと話していたという。

 FRBが短期金利をオーソドックスに操作していたころは、寧波の人々やイリノイのトウモロコシ農家がFRB議長の発言に関心を持つ必要はほとんどなかった。しかし、今はバーナンキ議長の発言の影響が驚くほど広範囲に及ぶ。

 こうなると中央銀行にとって市場の期待の制御は容易ではなくなってくる。過剰反応が起きやすいからだ。FRBがQEで供給したマネーの大半は、実は単にFRBにある民間銀行の当座預金口座に積み上げられているのだが、QEの効果に対する過大な評価が世界中で生まれていた。そのイリュージョンの反動が現在生じている。

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