ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
出口治明の提言:日本の優先順位

続・日本人の「残業精神論」問題――人間にとって働くことの意義はどこにあるか

出口治明 [ライフネット生命保険(株)代表取締役会長]
【第90回】 2013年7月9日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

前回のコラムで、「日本人の労働時間が長い原因は残業を評価する誤った精神論にある」と書いたところ、多くの読者からたくさんのご意見を頂戴した。そこで、再度、この問題について考えてみたい。

若い時、必死に仕事に
打ち込むことは是か非か

 最も多く寄せられたコメントは、「若い時、必死に仕事に打ち込むことは、自分を鍛える意味でもかなり有効ではないか(≒長時間労働を行ってもいいのではないか)」というものだった。確かに、「石の上にも3年」という言葉があるように、新しい仕事に就いた時等は、「ともかくガムシャラに仕事に打ち込む」ことは、キャッチアップのためにも必要でもあり、また、かなり意味があることだと考える。

 これは何も、若い時に限った話ではない。人生では「踏ん張りどころ」や「正念場」が、誰にも等しく訪れる。友人のスペイン人のバンカーは、例年2ヵ月近い夏休みを取っていたが、ある銀行の頭取として経営の立て直しに招かれた時は、土日もなし、休暇もなしで、1年365日、ひたすら仕事に取り組んでいた。人生を時間軸で考えた時、ひたすら必死に仕事に打ち込む時期があっても当然いいと思う。大学時代が、必死に勉学に打ち込むべき時期であるように。

 しかし、だからと言って、たとえば若い人に職制が長時間労働を強いるようなことは、決してあってはならないと考える。それはパワハラそのものであり、「俺が鍛えてやる」などといった、それこそ時代錯誤の不毛な精神論の発露に他ならない。必死に仕事に打ち込むことは、原則としては、あくまで自発的な営為であるべきだ。その意味でも、時間を切り売りする労働ではなく、自分のアタマで考える裁量的労働が、21世紀の労働観の中核に据えられるべきだろう。

 また、若い時や大変な時は、それこそ「火事場の馬鹿力」で、感覚的には多少の無理がきくことは紛れもない事実だ。しかし一方で、ありとあらゆる医学的所見が、たとえ若い人であっても、長時間労働は一般に注意力の低下をはじめとした労働生産性の低下をもたらすことを指摘している点を、決して忘れるべきではあるまい。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

出口治明 [ライフネット生命保険(株)代表取締役会長]

1948年、三重県美杉村生まれ。上野高校、京都大学法学部を卒業。1972年、日本生命保険相互会社入社。企画部や財務企画部にて経営企画を担当。生命保険協会の初代財務企画専門委員会委員長として、金融制度改革・保険業法の改正に従事。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て同社を退職。その後、東京大学総長室アドバイザー、早稲田大学大学院講師などを務める。2006年にネットライフ企画株式会社設立、代表取締役就任。2008年に生命保険業免許取得に伴い、ライフネット生命保険株式会社に社名を変更、同社代表取締役社長に就任。2013年6月24日より現職。主な著書に『百年たっても後悔しない仕事のやり方』『生命保険はだれのものか』『直球勝負の会社』(以上、ダイヤモンド社)、『生命保険入門 新版』(岩波書店)、『「思考軸」をつくれ』(英治出版)、『ライフネット生命社長の常識破りの思考法』(日本能率協会マネジメントセンター)がある。

ライフネット生命HP

 


出口治明の提言:日本の優先順位

東日本大地震による被害は未曾有のものであり、日本はいま戦後最大の試練を迎えている。被災した人の生活、原発事故への対応、電力不足への対応……。これら社会全体としてやるべき課題は山積だ。この状況下で、いま何を優先すべきか。ライフネット生命の会長兼CEOであり、卓越した国際的視野と歴史観をもつ出口治明氏が、いま日本が抱える問題の本質とその解決策を語る。

「出口治明の提言:日本の優先順位」

⇒バックナンバー一覧