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China Report 中国は今

知られざる中国シャドーバンキング問題の一側面
20万社を数える鉄鋼専門商社に連鎖破綻リスク浮上

姫田小夏 [ジャーナリスト]
【第130回】 2013年7月19日
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 中国経済の減速で、好況下では明るみに出ることがなかった不法ビジネスが、徐々に表面化している。

 それは多額の利ざやが望める投機的ビジネスにおいて顕著であり、その1つの典型例が不動産売買である。不完全な法律、法規、曖昧な権利関係を巧みに利用し、巨額のマネーがこの市場に入り込んだ。

 デベロッパーの資金調達のみならず、中小企業のセカンドビジネス、個人の資金を集めてのマネーゲーム、こうした不動産投資に資金を提供してきたのは、いわゆる「地下金融」といわれる「影の銀行」の存在である。

 不動産だけではない。「影の銀行」は鉄鋼の世界をも支配していた。中国では昨年来、鉄鋼業界の連鎖破綻が取り沙汰されている。

20万社を数える鉄鋼専門商社
福建人が独占し特殊な業界を形成

 上海の宝山鋼鉄(かつての宝山製鉄所)につながる街道沿いに、鉄鋼製品を扱う商社がある。筆者は図書館に通うため、週に数回、この店の前を通る。うす汚れたガラス窓からは室内の様子が丸見えだが、薄暗い部屋の奥に人の気配はない。エントランスも固く施錠されたままだ。

 「景気悪そうだな」と思っていた矢先、引っ越しが始まった。今年3月のある日、店内は珍しくざわついていて、部屋の中から事務機器やサンプルを持ち出す姿が見られた。そしてこの鋼材商社は、すっかりもぬけの殻となった。

 新聞に「不良債権」という見出しが目立つようになったのもこの春頃からだった。4月、中国銀行業監督管理委員会(銀監会、日本の金融庁に相当)が「2013年経済金融形勢通報分析会」なる会議を開催したという記事は「ここ数年の銀行融資の増加は、数年後には違約という形で表面化するだろう。ある一部の地区と業界において、すでに不良債権は顕在化している。危ないのは鉄鋼商社、造船、太陽電池業界だ」と静かに警告していた。

 あの街道沿いの商社は、移転ではなく倒産だったのだ。その原因は、資金繰りの悪化であり、昨今、上海の空気をよりいっそう重くしているのは、この鉄鋼専門商社ともいえる。

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姫田小夏 [ジャーナリスト]

ひめだ・こなつ/中国情勢ジャーナリスト。東京都出身。97年から上海へ。翌年上海で日本語情報誌を創刊、日本企業の対中ビジネス動向を発信。2008年夏、同誌編集長を退任後、「ローアングルの中国・アジアビジネス最新情報」を提供する「アジアビズフォーラム」主宰に。語学留学を経て、上海財経大学公共経済管理学院に入学、土地資源管理を専攻。2014年卒業、公共管理修士。「上海の都市、ビジネス、ひと」の変遷を追い続け、日中を往復しつつ執筆、講演活動を行う。著書に『中国で勝てる中小企業の人材戦略』(テン・ブックス)、共著に『バングラデシュ成長企業 バングラデシュ企業と経営者の素顔』(カナリアコミュニケーションズ)。

 


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90年代より20年弱、中国最新事情と日中ビネス最前線について上海を中心に定点観測。日本企業の対中ビジネスに有益なインサイト情報を、提供し続けてきたジャーナリストによるコラム。「チャイナ・プラス・ワン」ではバングラデシュの動向をウォッチしている。

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