アップルのiPhoneの生産を手がけていることで知られる台湾の電子機器受託生産サービス(EMS)世界最大手、鴻海精密工業の株主総会が6月26日、台湾の新北市にある本社ビルで開かれた。午前9時から始まった株主らとの対話は、一つひとつの質問に対して、創業者の郭台銘(テリー・ゴウ)会長がマイクを片手に持論をぶち続ける独演会となり、会場は鴻海カラー一色に染まった。本誌は前代未聞の約8時間半に及ぶ株主総会に密着し、メディア嫌いで知られる郭会長にも直撃インタビューを敢行。日本に新設した液晶パネルの研究開発拠点についても、新事実が明らかになった。

謝罪後、一転して「台湾の株主たちはバラバラだ」と説く郭台銘会長
Photo by Naoyoshi Goto

 午前9時。古くからの個人株主や、機関投資家の担当者ら数百人が詰めかけた本社5階の大ホール。茶褐色のスーツと、ピンク色のネクタイで決めた郭台銘会長が姿を現すと、あいさつもそこそこに、まずは低迷している株価について謝罪した。

「最近の株価は、多くの株主にとって失望するものだ。努力が足りないとしか言いようがない。深くおわびします」

 2012年12月期の売上高は、約3兆2200台湾ドル(約10兆5436億円)。過去最高を記録したが、全売上高の50%以上を占めるとされている大口顧客アップルの成長鈍化を受けて、年初より株価は20%以上下落し、1株当たり70台湾ドル(約230円、1台湾ドル=3.3円)前後をさまよっている。

 また前年比15%増に設定した今期の売上高の成長目標も、取り下げはしないが、ここにきて簡単ではないという現状を認めた。

 壇上でお辞儀をする姿は、素直に株主に謝罪したかに見えた。しかし、話はそこで終わらなかった。