現実感のなかった「物価上昇」「インフレ」という言葉が、じわじわと家計運営に影を落とし始めている。「今こそ資産運用」との視点は重要だと思われる。

 一般的に資産運用と言えば、株式や債券投資、投資信託への投資などを思い浮かべるだろう。これはこれで大切なことなのだが、もう少し違う視点で、自分のお金の行く先が、現在のそして将来の社会に対してどのような影響を及ぼすのかに思いを馳せてみてはどうだろうか。

 ある国の債券を買うという行為が、意図せずに戦争遂行の資金になっていたり、クーポンの原資が途上国に不当に押し付けられた債務の返済によるものかもしれない。何気なく預金をしている金融機関が、海外の軍需産業や途上国に劣悪な労働条件を強いることで成り立っている企業に投資しているかもしれない。

 「私のお金」が誰にどういったインパクトを与えているかに自覚的であろうとすることが、持続可能な社会を造るために不可欠だと思われる。何故なら、それらは地球環境の破壊や内乱、暴力の連鎖といったことと密接につながっているからだ。

生産者自立を支援する
フェアトレード活動

 「フェアトレード」という言葉を聞いて、「ああ、何となく聞いたことがある」という方がずいぶん増えてきたように思う。公正な取引といった意味合いだが、現在の国際貿易がもたらす環境や地域経済への破壊的な状況を改善し、途上国の住民を搾取するのではなく、対等のパートナーとしての関係を築き、経済的自立を促すことを目指すものだ。私たち生活者にとっては、フェアトレード商品を買うことで国際協力ができる。

 あるフェアトレード団体の代表者から話を聞く機会があった。設立以来15年間、途上国で生産・栽培されている商品を継続的に輸入・販売し、生産者が自立するための取り組みを続けている。施しではなく、目の肥えた日本の人たちが喜んで買ってくれるような製品作りのために、現地の人に技術指導し、できた製品を確実にマーケットにつなげている。

 「生産者は北極星」をモットーに、迷ったときは「生産者にとって良いか悪いか、今だけではなく将来にわたって」の問いを自分に発し続けるという。かつてその国の人たちは、大きなNGOによる技術援助をずいぶん受けていたらしいが、技術を学ぶだけでマーケットにつながらず、生活向上には何の役にも立たないという経験を持っていた。そのため疑心暗鬼になる現地の人たちに、粘り強く働きかけ信頼を勝ち得る苦労は並大抵のものではない。