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世界初をつくり続ける東大教授の「自分の壁」を越える授業
【第4回】 2013年8月5日
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生田幸士 [東京大学 先端科学技術研究センター、情報理工学研究科システム情報学専攻教授]

ジョブズもディズニーも
作り出したのは「ジャンル」だった!
とあるコンセプトから生まれた世界初のヘビ型ロボットとは?

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「新しいものを生み出すにはコンセプトを作ろう」と言われますが、では、あなたはどうやって自分のコンセプトを見つけていきますか?「ジョブズもディズニーも作り出したのはジャンルだった」という言葉の意味とは? ロボット内視鏡を生み出した東大教授の特別授業、第4回!

「どうしたいのか?」「どうなりたいのか?」から始める

 わたしは博士をとってすぐ、「世界でひとりだけしかやっていない研究をしている」という理由で、カリフォルニア大学サンタバーバラ校ロボットシステムセンターで働くことになりました。

 そこで覚えた印象的な言葉に、「グランド・チャレンジ」というものがあります。グランドとは、グランドピアノとかグランドファーザーなんかのグランド。直訳するなら「壮大な挑戦」となるわけですが、これだとちょっとニュアンスが違うんですね。単なる挑戦ではなく「抜本的な改革・イノベーションとしての挑戦」に近い意味が、この言葉には込められています。

 どういう場面で使うかというと、たとえばわたしが学会などで「こういう発想でロボットをつくって、こんな世の中を実現したい」という話をすると、アメリカ人の研究者は一様に「これは素晴らしいグランド・チャレンジだな!」と評価してくれる。

 一方、日本で同じ話をすると「まあ、おもしろい『お話』でしたね」となってしまう。この違い、おわかりになりますか?つまり、日本人の研究者は「夢物語はいいから、実物をつくって結果を出せ」という態度なのに対して、アメリカ人は発想そのものに評価を与えるのです。

 結果的に、この態度の違いが日本から新しい「ジャンル」を生みにくくしているのだと思います。

「グラント・チャンレンジ」の見つけ方

わたしはいつも、学生たちに「コンセプトから考えること」の重要性を説いています。いきなりモノをつくろうとするのではなく、まずはコンセプトレベルから考える。技術を新しくするのではなく、コンセプトを刷新する。

 たとえば、市場に出回っているパソコン。そのスペックは日々改善され、向上していっています。5年前のパソコンと最新型のパソコンでは、ディスク容量から処理速度まで、雲泥の差があるでしょう。しかし、違いはせいぜいスペックのレベルなのです。技術的には日々新しくなりながら、じつはなにひとつとして新しくなっていない。改善に改善を重ねた結果の「最新型」にすぎません。

 一方、iPadに代表されるタブレット型コンピュータは、ノートパソコンの技術をコンセプトレベルで刷新したものになります。使われている技術としてはノートパソコンの延長でありながら、コンセプトがまったく違う。まさにグランド・チャレンジです。

 そしてここから「電子書籍の時代がやってくる」とか「デジタル教科書に使えそうだ」、「カーナビとして使ってみよう」など、ノートパソコンでは思いつかなかったようなアイデアも出てきます。

 話を整理しましょう。

「どうすればもっといいノートパソコンができるか?」
「ノートパソコンに必要な新機能はなにか?」


 ここから出てくるアイデアは、改善や改良の域を出ません。そうではなく、

「自分はどんな世の中を実現したいのか?」
「いま世の中には、なにが不足しているのか?」


 というように、将来のあるべき姿から考えていく。それがグランド・チャレンジであり、コンセプトの発想になります。新しいコンセプトさえ見えてしまえば、それを実現するためのアイデアも出てきますし、自分が取り組むべき課題もわかるはずです。このあたり、コンセプトから逆算する方法について、私が発明したヘビ型のロボット内視鏡を例に詳しく説明しましょう。

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生田幸士 [東京大学 先端科学技術研究センター、情報理工学研究科システム情報学専攻教授]

 

1953年大阪生まれ。大阪府立住吉高等学校卒。大阪大学にて金属材料工学科と生物工学科を卒業後、修士課程を経て、東京工業大学大学院制御工学専攻博士課程修了。工学博士、カリフォルニア大学研究員、東京大学専任講師、九州工業大学助教授、名古屋大学教授を経て2010年4月より東京大学教授。 医用マイクロマシン、医用ロボットの世界的先駆者。2010年紫綬褒章受章。文部科学大臣賞(研究功績者)、米国ラボラトリオートメーション学会功績賞、市村学術賞、グッドデザイン賞、ロボット学会論文賞など、受賞30件以上。IEEE主催マイクロマシン国際会議(MEMS’94)大会長。 新原理・新概念にこだわり、世界初の研究を次々につくり出している。また、助教授時代から『バカゼミ』『卵落とし大会』『カレーの日』など様々なイベントを開催し、凝り固まった日本の若者の頭をとことん柔らかくし、独創性を伸ばす創造性教育にも尽力。高校などへの出前授業も多数。NHK『爆笑問題のニッポンの教養』『ようこそ先輩』『ETV特集』、TBS『夢の扉』などテレビ出演も多々あり。趣味はウォルト・ディズニーの研究。

 


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