グーグル、ユーチューブ、セカンドライフ……。インターネット上に続々と登場する話題のサービスに、また新たな事業者が加わった。しかも、それは珍しいことに日本発である。

「ニコニコ動画」(ニコ動)は携帯電話向けコンテンツ開発のドワンゴの子会社であるニワンゴが運営。巨大掲示板「2ちゃんねる」管理人の西村博之氏が取締役として参加している。2006年12月にスタートしたばかりだが、会員数は350万人で、平均利用時間はユーチューブの3倍の3時間14分を記録している。10月10日には機能のリニューアルと海外進出を発表した。

 ニコ動はユーチューブのような動画共有サービスの一種で、自由に動画などを登録できる。しかし独特の機能がいくつかある。

 まず、動画作成者以外でも自由に動画にコメントを挿入することが可能だ。テレビのバラエティ番組で、大げさな字幕が出ることがあるが、まさにあれだ。ユーモラスなコメントや辛らつなコメントが並び、それ自体がコンテンツとなる。しかも、誰でも自ら参加している感覚を楽しむことができる。

 さらに動画の下部に、関連する商品へのリンクを提示する「ニコニコ市場」も独特だ。たとえば、子猫の動画の下に、子猫の写真集などを販売するページのリンクを設定できる。こちらも動画作成者以外の誰でも設定ができ、その商品が売れれば、紹介料が転がり込む仕組みだ。「負けたら切腹する」と宣言したボクサーの亀田大毅選手の試合画像の下に、模造刀の商品のリンクが設定されるなど、買い物を誘導するだけでなく、笑いを誘う仕掛けになっている。

 冒頭に挙げたような外国発のサービスは話題先行で、実際には利用者数が伸び悩んでいるケースもある。日本では、2ちゃんねるに代表されるように、ネット草創期から利用者が参加し盛り上げていくようなカルチャーがある。ニコ動はその需要を拾い、動画という次世代に移行させる役割を担ったといえよう。

 テレビ番組の無断使用など著作権問題や、アニメやゲームにコンテンツが偏っているなど、広く普及するには課題もある。しかし、現在、会員数は毎日2万人増え、年内には500万人を超えそうで、広告の掲載も急増している。

 西村氏は早期の黒字化には否定的な発言をしているが、ドワンゴ側には「今決算期の早い時期での単月黒字化を目指す」(小玉誠一・ドワンゴ経営企画室副室長)との意見もある。ちなみに、動画共有サービスの黒字化はユーチューブすら実現しておらず、世界初の快挙と見られる。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 清水量介)

※週刊ダイヤモンド2007年10月27日号掲載分