毎年蒸し返される靖国参拝問題の本質
中国、韓国のわが国に対する関心の高さ
毎年、8月15日の終戦記念日になると、「一部の閣僚が靖国神社に参拝した」、あるいは「参拝しなかった」というニュースを、各報道機関が取り上げる。それに対して、決まって中国や韓国から強い批判が寄せられる(今年は、安倍首相が直接参拝せずに玉串料を奉納し、3閣僚が参拝を行った)。
第二次世界大戦に至る戦争の中で、わが国が中国や韓国へ侵攻した経緯を考えると、わが国のリーダー層が靖国神社に参拝することは、感情的に耐えられないことなのかもしれない。それは、我々としても謙虚に相手の立場を理解する必要がある。
ただ、冷静に考えると、第二次世界大戦で実際に戦火を交えた国は両国だけではなかった。アジア諸国の中にも、旧日本軍の侵攻の対象になった国もあった。ところが、そうした国からは特に目立った批判は出ていないように思う。
両国がこれほど靖国参拝に神経質になる理由は、過去のわが国のスタンスに悪感情が残っていることに加えて、わが国に対する関心度が高いことが背景にあると考える。中国も韓国も、わが国が再び軍事大国になって、かつてのような過ちを犯す可能性が高いと見ているのか。それが現実のものになると、高い技術力を持った勤勉なわが国の国民性ゆえに、彼らにとって重大な脅威になることを想定しているかもしれない。
朝鮮半島は、アジアの中で最も戦略的重要性の高い地域だという。中国が世界の大国として著しく成長し、軍事的にも大きなプレゼンスを示す。また、ロシアの南下政策のエネルギーは朝鮮半島に向かい、それに対する米国のパワーが朝鮮半島でぶつかっている。そうした中で、日本がどのように立ち振る舞うかには自ずと注目が集まる。
このような状況を考えると、わが国の靖国参拝問題にはかなり複雑な背景が絡んでいるようだ。両国からの反対の声を、単なる批判と見ることは適切ではないだろう。
中国や韓国の経済関係の人々と接すると、彼らは日本に対してとても高い関心を持っていることがわかる。わが国で刊行された経済関係の書物が、中国語や韓国語に翻訳されて出版されるケースは結構多い。また、彼らは驚くほどわが国で開催される企業関係の国際会議のことをよく知っている。