Photo by Wakako Otsubo
ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)が今年11月に発売する「プレイステーション(PS)4」で、イチかバチかの賭けに出た。日本での発売を来年2月にずらし、規模の大きな欧米市場を優先、価格も従来と比べると低めに設定したのだ。
欧米市場ではクリスマス商戦が最大のヤマ場。そこで、ハードを優先的に供給することで、品切れを防ごうというのが狙いだ。現に8月時点で予約が100万台を突破し、「計画以上の注文を受けた」(アンドリュー・ハウス・SCE社長)と手応えを感じている。
価格も4万1979円(税込み)と、2006年に出したPS3が発売当初5万~6万円していたのとは対照的で、割安なのが特徴だ。PS2が1億5500万台を販売したのに対し、PS3の販売台数はその半分にとどまるなど、市場縮小が続いていることが背景にある。発売当初は売れれば売れるほど赤字となる逆ざやが発生するが、市場活性化のために価格には、あえて目をつぶった格好だ。
SCEは、もはやPS4で失敗は許されない。ソニーにとって、ハードとソフトの融合を具現したゲーム事業は「中核」(ハウス社長)だからだ。
ソニーの大株主で米投資ファンドのサード・ポイントは、同業他社より収益性が低いとして、ソニーのエンターテインメント事業の分離上場案を提案したが、ソニーはそれを拒否した経緯がある。それだけに、その判断が正しいことを証明しなければならないのだ。
任天堂の「Wii U」も、昨年11月の発売当初こそ米国で品切れが続出したものの、その後、魅力的なソフトが続かず失速している。ソニーのPS4も同じ懸念を払拭できずにいる。