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山田厚史の「世界かわら版」

銀行幻想にとどめ刺した半沢直樹
事実はドラマも凌ぐドロドロ劇

山田厚史 [デモクラTV代表・元朝日新聞編集委員]
【第45回】 2013年9月26日
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 銀行はイメージ産業である。「信用」という実態のない商品を売る。「立派な人たちが世の中のために、誠心誠意仕事をしています」という幻想を絡めて。エンタシスの柱が立つ荘厳な店を一等地に構え、頑丈で巨大な金庫で信用を形にし、優等生を高給で採用する。庶民が仰ぎ見る存在であることが「信用を売る商売」に欠かせない。

 幻想と現実の落差を見せつけたのがTBSドラマ「半沢直樹」である。業績と出世のため顧客を踏みつけ、違法行為も厭わず、黒を白と言いくるめるエリートたち。地に落ちたモラルに挑む正義感の復讐劇は「やられたら倍返しだ」という決めぜりふと相まって、拍手喝さいを浴びた。

 「銀行であんなこと、現実にはないよね」。ではなく「あんなことしてるんだろね、銀行は」という妙な納得感が最終回42%という驚異的な視聴率につながったのではないか。

 筋書きに使われた迂回融資(融資できない相手にカネを回すため、第三者の顧客を間にかませて資金を融通する。浮き貸しとも呼ばれる違法行為)、金融庁検査を逃れるため重要書類を事前に隠す「疎開」、合併した銀行間の主導権争い、敵を排除するための金融庁へのリーク……。どれも実際にあった事件や慣行を下敷きにしているから展開にリアリティがこもる。メガバンクで銀行員を経験した原作者ならではの筋書きだ。

現実の事件は億円単位の取引

 クライマックスとなった東京中央銀行の取締役会で「3000万円の迂回融資」が問題になり、半沢に追いつめられた大和田常務が土下座するシーンがある。

 正直、「たった3000万円?ケタが違うんじゃない」という違和感があった。現実の世界で事件になるのは億円単位の取引だ。

 1990年に住友銀行青葉台支店を舞台に起きた迂回融資は113億円だった。余罪を含めると浮き貸しは428億円に膨らんだ。

 東京地裁の判決は「株投機や地上げに関連する融資の媒介が銀行役職員によって広く行われていたことが事件の背景となった。住友銀行自体、監督が不行き届きだったとの非難を免れない」と指摘した。

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山田厚史 [デモクラTV代表・元朝日新聞編集委員]

やまだ あつし/1971年朝日新聞入社。青森・千葉支局員を経て経済記者。大蔵省、外務省、自動車業界、金融証券業界など担当。ロンドン特派員として東欧の市場経済化、EC市場統合などを取材、93年から編集委員。ハーバード大学ニーマンフェロー。朝日新聞特別編集委員(経済担当)として大蔵行政や金融業界の体質を問う記事を執筆。2000年からバンコク特派員。2012年からフリージャーナリスト。CS放送「朝日ニュースター」で、「パックインジャーナル」のコメンテーターなど務める。

 


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元朝日新聞編集員で、反骨のジャーナリスト山田厚史が、世界中で起こる政治・経済の森羅万象に鋭く切り込む。その独自の視点で、強者の論理の欺瞞や矛盾、市場原理の裏に潜む冷徹な打算を解き明かします。

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