9月20日、アップルはおよそ1年ぶりとなる新型iPhone「5s」「5c」を発売した。だが、製品以上にインパクトを与えたのが、国内通信キャリア最大手のNTTドコモが満を持してiPhoneの取り扱いに参入したということだろう。このビッグニュースに株式市場も一時大きな反応を示したが、ドコモは発売直後の販売シェアで大きな巻き返しにつなげられなかった観がある。足もとでキャリア3社の「横並び感」が強まるなか、ドコモのiPhone参入は今後業界にどんな変化をもたらすのだろうか。ドコモを軸にして、「iPhone戦国時代」に突入したスマホ市場の行方をリサーチしてみよう。(取材・文/デファクトコミュニケーションズ・高橋大樹、協力/プレスラボ)
株式市場の「期待」は本物か?
ドコモiPhone参入のインパクト
今年8月下旬のことだった。それまで下落基調にあったNTTドコモの株価が突然、3ヵ月ぶりの高値を更新、16万600円をつけた。上昇の背景には、同社の坪内和人副社長の言葉があった。
「いつ出すかが問題」
スマホ人気に火をつけたアップルの「iPhone」取り扱いに対する言及であった。この発言は、ドコモの株価を押し上げると同時に、その他2大キャリア、KDDIとソフトバンクの株価を押し下げたのである。
それから約1ヵ月後の9月20日、新型iPhone「5s」「5c」発売のタイミングで、ドコモは坪内副社長の言葉通りiPhoneの取り扱いに参入。発売数日前から、メディアでは新型iPhoneを購入する徹夜組の列が報じられ、「待った甲斐がありました!」と嬉しそうに語るドコモユーザーの姿も映し出された。
なぜ今、ドコモはiPhone市場に参入したのだろうか。
もともとドコモは、2013年4-6月期の販売戦略としてソニーの「Xperia A」と韓サムスンの「Galaxy S4」を優遇販売する「ツートップ戦略」を押し出していた。「Xperia A」はその3ヵ月で約130万台売れたものの、足もとでは売上は落ち着きつつあり、戦略が成功したとは言えそうにない。
事実、番号ポータビリティ制度(MNP)を利用したドコモから他社への流出者は、ここ数ヵ月毎月10万人規模で推移している。さらに言えば、ドコモは新規ユーザーの獲得にも苦戦している。