世界第3位の面積を誇る中国は、総延長2万2800kmの国境線をもつ。ギネスブックによれば、世界最多の16ヵ国と国境を接していると認定されているが、中国はそのほとんどの「隣国」と、国境問題や領土問題を抱えている。

 ヒマラヤの小国である「ブータン王国」もその一国だ。しかし、日本ではブータンについて、あまり報じられることはない。

 日本の報道でブータンがクローズアップされたのは、直近では2011年11月、ワンチュク国王とベマ王妃の震災後初の国賓としての来日と、それをきっかけに、ブータン国家の経済発展の哲学とされる「国民総幸福量(GNH)」が紹介されたときのことだ。

 国王夫妻の民族衣装は、日本の着物に良く似ていた。しかもブータン人は木造家屋に住み、ソバも食べれば、米も食べる。晴れの日には赤米(日本のお赤飯に相当)を炊く習慣もあるという。メディアを通して伝えられたブータンという国に、自然と親しみを感じた日本人視聴者も少なくないだろう。

 ブータンは、九州ほどの面積に70万人が住む。日本でいえば島根県ほどの人口だ。だからこそ、なのだろう。ブータン人であることのアイデンティティの強化は重要な国策の1つでもあり、これが「国民総幸福量」ともリンクしているのだ。

「国民総幸福量」は、経済的な繁栄の中に精神的に保たれた状態を両立させようというもので、「経済成長率が高ければいいのか?」「医療が高度に発展すればそれでいいのか?」「所得額や消費額が高ければそれでいいのか?」という、人間と社会の根本的なあり方に向き合うものである。

 これはブータン人が信仰する仏教の「諸行無常」や「因果応報」などの思想とも深くかかわっている。近代化の足かせと思われがちな宗教に、積極的にアイデンティティを見出し、それを21世紀の健全な発展につなげていこうとする挑戦は、世界もまた注目するところでもある。