カツオにもキャベツにも付加価値の源泉はある

──サービス産業の活性化には、地域の隠れた資源を顕在化させることも有効だと考えられます。

 もちろん有効です。ある土地に大変魅力的な観光資源があっても、その土地で生まれ育った人には、それが価値に見えないということがあります。それを明確に価値として位置付けることが必要です。

 先日、高知を訪れたときにソウダガツオの稚魚である新子(シンコ)の話を伺いました。この魚は、刺し身にすると3時間くらいしか鮮度が持たないのだそうです。釣り上げた後すぐに刺し身にして、そこに地元の「ブッシュカン」というかんきつ類の果実を搾って時間を置かずに食べるのが、新子の最もおいしい食べ方なのです。当然、大阪や東京などの大消費地まで輸送することはできませんから、地元で頂くしかありません。旬の季節も限られています。

 そのような条件があるために、新子のほとんどがこれまでは地元で消費されていました。しかし、その限られた条件を価値として捉え直すことも可能です。ある特定の場所で、ある特定の時期にしか食べられない、最高においしい食べ物。それを県外から、あるいは海外から味わいに来てもらう。そのような発想の転換が、何より必要であると感じています。

──そのような付加価値は、あらゆるサービス分野で見出せそうですね。

 私の家業は、大田青果市場の野菜の仲卸です。私自身、その会社の社長を務める中で、野菜にはいろいろなストーリーがあることを知りました。有機栽培、減農薬栽培、生産者のキャラクター、野菜そのものの栄養分──。そういった一つ一つの情報がストーリーとなり、付加価値となるのです。

 私の会社の取引先に、大変甘みのあるキャベツを作る農家がいました。他のキャベツとは比べものにならないくらいの甘みです。その農家は、「ヒヨドリがうちのキャベツだけを食べに来る」というエピソードを伝えながら、その甘みをアピールしていました。見た目には区別がつきにくくても、ささいなエピソードですが、それを伝えることで、そのキャベツには付加価値が生まれます。つまり、付加価値を生み出すというのは、必ずしも難しいことではないということです。サービスの本質的な価値をどのように見いだし、どのように伝えていくか。あらゆる事業者がその工夫をしていけば、サービス業界は大きく発展していくことができると私は信じています。