ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
いまこそ読みたい! ダイヤモンド社100年100冊
【第27回】 2013年10月24日
著者・コラム紹介バックナンバー
坪井賢一 [ダイヤモンド社論説委員]

「脱原発」は安全性の問題だけではない!
気鋭の経済学者が提言したエネルギー転換策
『原発に頼らなくても日本は成長できる――エネルギー大転換の経済学』

1
nextpage

発生から2年半を経過しながら依然として”本当の収束”が見えない福島第一原発事故。増え続ける汚染水処理の問題は、日々のニュースに紛れながら伝え続けられています。事故対応は当然のことながら、俎上にあがったままのエネルギー政策再編論議も早急に進めなければならない問題です。今回紹介するのは、経済学側面からエネルギー政策の処方箋を提示した1冊です。

金融危機との比較で浮き彫りにする
原発の本質的危険性と致命的欠陥

円居総一著『原発に頼らなくても日本は成長できる――エネルギー大転換の経済学』
2011年7月刊行。東日本大震災直後に執筆され、経済学的観点から原発問題、そしてエネルギー問題に対して合理的な提言を行っています。

 福島原発事故から4ヵ月後に出版された本書『原発に頼らなくても日本は成長できる』は、「原発ゼロ」で持続的成長が可能であることを論証したものです。著者は旧東京銀行のエコノミストを経て、日本大学で国際経済学を講じる経済学者です。原子力の技術論ではなく、徹底的に費用と便益の関係から分析を進めています。

 原発の仕組みは、じつは非常に単純で、ウランの核分裂反応で発生する膨大な熱によってお湯をわかし、水蒸気の圧力でタービンを回して発電するものです。それだけです。問題は核分裂反応を制御することと、核分裂後の放射性物質を管理すること、そして放射性廃棄物の処理なのです。

 放射性廃棄物の最終処分場はありません。再処理して出てくるプルトニウムをもう一度燃料にして循環させるシステムを開発中ですが、完成の見込みはまったくありません。核廃棄物はけっきょく発電所で管理し、しばらくすると中間貯蔵施設に運ぶだけです。その先は不透明なのです。

 システムが崩壊すると暴走して世界的危機に拡大する金融と比較して、著者は原発の本質的危険性についてこう書きます。

 金融の場合は、危機を最終的に収集する中央銀行の「最後の貸し手」機能があり、金融機関が経営危機に直面した場合は中央銀行が貸出をして救済する。その存在が前提となって危機は収束したのである。
 では原子力発電における危機管理は、万全と言えるのだろうか。原子炉暴走の危険性は金融の比ではないが、その安全システムの致命的欠陥が今回明らかになった。すなわち、事前の安全システムも脆弱で、危機に立ち至った場合にそれを収拾する手立ても、技術も備えていなかったのである。(18ページ)

1
nextpage
スペシャル・インフォメーションPR
ダイヤモンド・オンライン 関連記事
まいにち小鍋

まいにち小鍋

小田真規子 著

定価(税込):本体1,100円+税   発行年月:2016年11月

<内容紹介>
簡単で安くて、ヘルシー。ポッカポカの湯気で、すぐにホッコリ幸せ。おひとりさまから共働きのご夫婦までとっても便利な、毎日食べても全然飽きない1〜2人前の小鍋レシピ集!「定番鍋」にひと手間かけた「激うま鍋」。元気回復やダイエットに効く「薬膳鍋」や、晩酌を楽しみたい方に嬉しい「おつまみ鍋」など盛り沢山!

本を購入する
ダイヤモンド社の電子書籍
(POSデータ調べ、11/20~11/26)


注目のトピックスPR


坪井賢一 [ダイヤモンド社論説委員]

1954年生まれ。78年早稲田大学政治経済学部卒業後、ダイヤモンド社入社。「週刊ダイヤモンド」編集長などを経て現職。著書に『複雑系の選択』『めちゃくちゃわかるよ!経済学』(ダイヤモンド社)『浦安図書館を支える人びと』(日本図書館協会)など。


いまこそ読みたい! ダイヤモンド社100年100冊

ダイヤモンド社は2013年5月1日に創立100年を迎えることになりました。雑誌を追う形で始まった書籍事業も、ビジネスジャンルを中心に刊行点数は1万点を優に超えています。

書籍は、その時々の経済環境や流行など世相を色濃く反映しているものが多数を占めますが、時代を超えて読み継いでもらいたい名著が、私達の書棚にはたくさん並んでいます。

本連載は100周年を記念し、普遍の名著と呼ばれる作品から、今だからこそ読みたい隠れた名作まで、有名無名織りまぜた100冊を紹介していきます。ダイヤモンド社が誇るベテラン執筆陣の、単なる書評にとどまらない論説をご期待ください!

 

「いまこそ読みたい! ダイヤモンド社100年100冊」

⇒バックナンバー一覧