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新型インフル感染者を糾弾する、
中国ネチズン“人肉捜索”の凄まじさ

山谷剛史 [フリーランスライター]
2009年5月21日
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 SARSで痛い経験を積んだ中国は、新型インフルエンザに対し徹底した水際対策を実施し、現在のところ感染者は中国本土で公称4人で留まっている。現在のところ、中国全土でマスクを着用している人は滅多に見られない。しかし、インターネットの世界で、新型インフルエンザの思わぬ「2次被害」が広がっている。都市部の若者はある意味、インフルエンザ感染以上にその被害が及ばないようにと戦々恐々だ。

 山東省で確認され、中国での新型ウィルス感染2例目となった19歳の中国人学生は、その最大の被害者だ。彼は、留学先のカナダから空路で北京に降り、その後山東省の済南まで鉄道を利用して移動し、済南でインフルエンザ感染が確認された。このニュースが流れるや、中国のネチズン(ネットワーク市民)がこぞって学生を非難した。

 「ネチズンの話によれば」という前置きをした上で「カナダにいたときに感染の可能性をルームメイトに話していた」「飛行機では彼の後ろにメキシコ人がいて感染した」「彼自身、感染しているのを気づきながら帰国に固持した」「帰国後友人に感染の可能性があることを告白し、北京のウォルマートでマスクを買いに行ったが売っていなかった」「結局北京でマスクは買えずにそれでも列車に乗った」といった未確認な情報の数々が、あたかも真実のように飛び交った。

中国の新聞で連日報道される新型インフル情報

 確実でない情報が積み重なり、怒るネチズンの火に油を注ぐこととなった。「アイツは感染したと感づいていながら、帰国を決行し、他人の危険を顧みず北京を練り歩いた。あまりにも自分勝手な行為だ」「アイツは故意でウイルスをばらまいた」など、学生への攻撃は止まらない。あるネチズンは学生に伝染の伝の字を用いた「呂伝伝」や「毒王」などといったあだ名を付け、有名人に祭り上げた。

 一躍ネチズンにとって時の人となってしまった学生に対し、怒りの止まらぬネチズンは、「人肉捜索」と呼ばれる個人情報の調査に乗り出し、彼の個人情報を暴いた。ネットでの学生叩きの止まらぬ中、16日には彼の父親が自ら、この騒ぎを収束させるべくテレビに登場し、謝罪を行なうまでに至った。

 四川省で確認された中国4例目の感染者もまた、ネチズンの呼びかけにより人肉捜索の餌食となった。ただし彼の場合は米国から日本経由で四川省へと空路を利用しただけだったので、前述の学生ほどはネチズンに蔑視されてはいない。

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山谷剛史 [フリーランスライター]

日本人の立場から中国のIT事情を紹介する。執筆の他、講演も行う。著書に「新しい中国人 ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)


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