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「引きこもり」するオトナたち

社会に存在しないように生きる――
「トラウマ」を抱えた人々の“沈黙の叫び”

池上正樹 [ジャーナリスト]
【第174回】

 「引きこもり」と呼ばれている圧倒的多くの中核層は、声を上げる余力がなく、姿を見せない人たちだ。

 こうして引きこもっている人たちの状況は様々だが、その背景を丁寧に探っていくと、過去のトラウマ(心的外傷)を抱えたまま、心を閉ざし続けているようなケースが少なくない。トラウマには、PTSDのほか、解離症状、抑うつ症状などもある。

 一般的に、私たちが接することができる当事者というのは、体調が少し回復して、こもる状態から社会に向かって動き始めたり、声を上げたりできる段階の人たちだ。

 多くのトラウマは、見えなくなり、語られなくなって、埋もれていく。時間の経過とともに、トラウマの影響は複雑化し、因果関係がわかりにくくなっていくからだ。

 精神科医師で、一橋大学大学院社会学研究科の宮地尚子教授(医療人類学)は、最近出した著書『トラウマ』(岩波新書)の中で、このような「埋もれていくトラウマ」と支援者の関係性について、「環状島」という独自に生み出したモデルでわかりやすく紹介している。

ドーナツ型の島「環状島」の
“沈黙の海”に沈むトラウマを抱えた人々

 同書によると、環状島とは、真ん中に沈黙の<内海>がある、ドーナツ型の島のことだ。

 トラウマを巡る語りや表象は、中空構造をしている。トラウマが重ければ、それは沈黙の海に消えていきやすい。

 内海では自殺などで死に至ることもあるし、生き延びたとしても、2次障害で精神疾患などを患って語れなくなることもある。

 また、環状島の内斜面には、生き延びた被害者のうち、声を上げたり姿を見せたりできる人がいる。

 一方、外斜面にいる支援者は、尾根を越えて内斜面に入っても、沈黙の内海には飛び込めない。現場に入っていかざるを得ない支援者もいるが、惨状を目にして自分が被災することもある。

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池上正樹 [ジャーナリスト]

通信社などの勤務を経て、フリーのジャーナリストに。主に「心」や「街」を追いかける。1997年から日本の「ひきこもり」界隈を取材。東日本大震災直後、被災地に入り、ひきこもる人たちがどう行動したのかを調査。著書は『ひきこもる女性たち』(ベスト新書)、『大人のひきこもり』(講談社現代新書)、『下流中年』(SB新書/共著)、『ダメダメな人生を変えたいM君と生活保護』(ポプラ新書)、『あのとき、大川小学校で何が起きたのか』(青志社)など多数。TVやラジオにも多数出演。厚労省の全国KHJ家族会事業委員、東京都町田市「ひきこもり」ネットワーク専門部会委員なども務める。YAHOO!ニュース個人オーサー『僕の細道』

 


「引きこもり」するオトナたち

「会社に行けない」「働けない」――家に引きこもる大人たちが増加し続けている。彼らはなぜ「引きこもり」するようになってしまったのか。理由とそうさせた社会的背景、そして苦悩を追う。

「「引きこもり」するオトナたち」

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