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マーケットで成功するための投資の心理学

「ラブ・アタック」でかぐや姫に選ばれる確率は?

――あなたの使う「確率」が正しいかを試すクイズ

林 康史 [立正大学経済学部教授]
【第9回】 2008年2月7日
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ベイズの定理

 不確実な状況(不完全な情報)において、何らかの出来事が発生する確率を導き出すのがベイズの定理だ。

 かつて関西のテレビに「ラブ・アタック」という番組があった。私などにはとても懐かしいのだが、1人の女の子をめぐって5人の男子がドンゴロス(麻袋)に入って障害物競走をしたりフルコースを早食いしたりするという番組で、最後に残った3人が歌を歌って「かぐや姫」に順番にプロポーズするというもの。司会は、横山ノックと上岡龍太郎、和田アキ子だった。以下は、その番組をイメージしての設問。

【問1】
ABCの3人の候補のうち、「かぐや姫」はすでに誰のプロポーズを受け入れるかを決めているのだが、本人たちには知らされていない。「かぐや姫」の気持ちを知っているのは司会者だけだった。
Aは、「BかCのどちらかは必ずフラれるのだから、フラれるやつを教えてくれ」と司会に頼んだ。すると司会者は、「Cはフラれる運命や」とうっかり本当のことを答えてしまった。
これを聞いたAは、「自分(A)かBがプロポーズに成功するわけだ。確率は1/3ではなく、1/2になった」と考えて、喜んだ。
Aが選ばれる確率は?

 確かにAが喜んだように、確率は1/2になったような気がする。しかし、ベイズの定理(※1) に従って計算すると、「Cはフラれる」と教わったとしても、Aのプロポーズが受け入れられる可能性は1/3のままである。

(※1)ベイズの定理とは、事象B(ここでは司会者の発言)が起きたとき、事前確率を事後確率に更新するための定理。一般的に、事象Bが起こるすべての可能性を分母とし、そのうちの「事象Aが起きて、かつ、事象Bが起きる」という可能性を分子として計算する。

事前確率と事後確率

 以下、簡単に説明しよう。

 事前の確率は、ABCそれぞれ1/3である。

 ABCのうち1人のプロポーズが受け入れられると仮定したとき、「BかCのどちらかは必ずフラれるのだから、振られるやつを教えてくれ」というAに対して、司会がどう答えるかは次のようになる。

Aが選ばれると知っている司会が「Cはフラれる」と答える確率は1/2。
Bが選ばれると知っている司会が「Cはフラれる」と答える確率は1。
Cが選ばれると知っている司会が「Cはフラれる」と答える確率は0。

 以前に紹介した「タクシー問題」と同じで、分母は、司会が「Cはフラれる」と答える確率であり、分子は、Aが選ばれると知っている司会が「Cはフラれる」と答える確率である。結局は、1/3。

 要するに、確率は変わらないのだろうと思った人がいるかもしれないが、それは早合点。この問題では、たまたま同じだったというにすぎない。

 どうもよくわからないという人は、市川伸一がルーレット表現(同型図式)と呼ぶ方法で考えて見るとよい(『考えることの科学』中公新書)。

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林 康史 [立正大学経済学部教授]

大阪大学法学部卒。東京大学法学修士。メーカー・生命保険・証券投資信託・銀行で、海外営業・外国為替ディーラー・ストラテジストなどを経験した後、2005年4月から現職。投資の心理に関する著訳書多数。最新刊に、『決定版 株価・為替が読めるチャート分析』(日経ビジネス人文庫)、『バリュー投資』(日経BP社)。立正大学経済学部では、「投資入門(テクニカル分析とシステム入門)」をテーマとする公開講座を開催します(4/14、4/21、4/28。受講料は無料)。講師は林康史氏。問い合わせ先:立正大学経済学部 TEL: 03-3492-7529 E-mailメール: eco@ris.ac.jp


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長年金融の実務に携わってきた著者が、相場における成功や失敗の原因を、人間の心の働きと経済の関係を研究する行動経済学の立場から解き明かす。

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