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政局LIVEアナリティクス 上久保誠人

マニフェストで迷走する民主党は「脱官僚」の単一争点で勝負すべし

上久保誠人 [立命館大学政策科学部教授、立命館大学地域情報研究所所長]
【第30回】 2009年8月17日
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 史上最長の「総選挙前哨戦」が続いている。ここで特に注目を集めているのは、総選挙後に政権獲得の可能性が高い民主党の政権公約(マニフェスト)だ。しかし、民主党は様々な批判を受けてマニフェストの修正を繰り返し迷走している。私は、民主党はこれらの批判に過敏に反応せず、むしろ「脱官僚」の単一争点選挙に持ち込むべきだと考える。

 民主党の迷走は、インド洋での海上自衛隊の給油活動を来年1月の期限まで継続させるという、安全保障の政策転換から始まった。しかし、社民党などの批判により、最終的に給油活動の賛否に触れないという曖昧な対応となった。また、地方分権では「国と地方自治体の協議の場の設置」が政権公約から抜けていて、橋下徹大阪府知事らから酷評された。その結果「協議の場」は追加された。

 農業では、政権公約に「米国との間でFTAを締結し、貿易・投資の自由化を進める」と明記した。これを自民党農林族、全国農業協同組合中央会などが、農畜産品が関税撤廃の対象となり日本農業が崩壊するとして痛烈に批判した。また、民主党内からも異論が出るようになり、結局「締結」の表現を「促進」に変更した。

 この民主党の迷走に対して、麻生太郎首相は財源問題や一貫性のなさなど様々な角度から批判を展開し「政権継続」を訴えた。その結果、衆院選公示前に自民党の支持率が若干回復した。

「マニフェスト選挙」に
巻き込まれた民主党の愚

 これは民主党の明らかな戦術ミスだ。国民が今、政治に望むことは様々な政策を並べることではないからだ。むしろ、国民が望むことは都議選が示したように「官僚支配の自民党政治」からの「変化」なのだ(第28回)。なぜなら、民主党の支持率はこの迷走にもかかわらず落ちていない。また、民主党と自民党の政権公約の最大の違いは、この「脱官僚支配」なのだ。民主党が「政権交代」によって「脱官僚」を実現すると堂々と掲げているのに対して、自民党はなにも示していない。

 つまり、民主党は「脱官僚」の一点に絞って自民党政治を攻撃すべきであり、2005年総選挙における小泉首相(当時)のように単一争点の選挙をやるべきだ。マニフェストの個別項目は、あくまで「脱官僚」をアピールする事例という位置づけにとどめるべきなのだ。国民の声を理解することなく、杓子定規に生真面目な「マニフェスト選挙」を行い、個別項目を散々に批判されて迷走するなど、選挙戦術として愚の骨頂と言えよう。

「脱官僚」の単一争点選挙が
国民に支持される理由

 なぜ民主党が「脱官僚」の単一争点選挙を行うべきか、もう少し詳しく考えてみる。まず、2007年参院選以降の「ねじれ国会」での世論の推移を振り返ってみる。「ねじれ国会」では野党が参院の過半数を制したために、参院の様々な法案審議で与野党が激突し、審議がストップした。しかし、度重なる野党の審議拒否・法案否決をマスコミや識者が批判したが、世論調査では常に内閣支持率・与党の支持率の下落が野党のそれより大きかったことを指摘したい。

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上久保誠人 [立命館大学政策科学部教授、立命館大学地域情報研究所所長]

1968年愛媛県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、伊藤忠商事勤務を経て、英国ウォーリック大学大学院政治・国際学研究科博士課程修了。Ph.D(政治学・国際学、ウォーリック大学)。博士論文タイトルはBureaucratic Behaviour and Policy Change: Reforming the Role of Japan’s Ministry of Finance。

 


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「大物政治家に話を聞いた」「消息通に話を聞いた」といった大手マスコミ政治部の取材手法とは異なり、一般に公開された情報のみを用いて、気鋭の研究者が国内・国際政局を分析する。

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