ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
伊藤元重の新・日本経済「創造的破壊」論

資本と労働の伸びが期待できないなか、
日本経済が成長するために最も必要なものは何か?

伊藤元重 [東京大学大学院経済学研究科教授]
【第37回】 2013年12月2日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

大切なのはマクロとミクロの両方の視点

 多くの経済現象にはマクロとミクロの視点がある。この2つは矛盾したり、整合性を欠く結果を招いたりすることが少なくない。

 その典型が社会保障政策だろう。社会保障政策の多くの専門家は、それぞれの分野の詳細について熟知しており、重要な指摘をすることが多い。高齢者医療の問題点、介護人材の確保のために必要な政策、予防医療の効果、ICT(情報通信技術)を利用した医療や介護の効率化など、実に多様な政策が提案されている。

 これら専門家による指摘は重要なものだが、その多くはミクロ的な視点に基づいている。ミクロの論点を積み上げていったとき、その結果として見えてくるマクロの姿が、非常におかしなことになるケースがある。社会保障の例で言えば、ミクロレベルでの専門家の提案を積極的に導入しようとすると、結果として財政的に実現不可能な姿になってしまうのだ。

 今や社会保障は日本の財政にとって最大の課題である。ここを健全に運営しないかぎり、日本の財政は破綻してしまう。そうしたマクロの重要な論点は、残念ながらミクロの議論をするときには消えてしまうのだ。

 本連載で取り上げてきた成長戦略にも似たようなところがある。規制緩和や市場開放など、ミクロレベルでさまざまな成長戦略の政策が議論されている。こうした改革論議は非常に重要である。ただ、それがマクロ経済全体から見て、日本経済を成長させていくのに十分なものか、あるいはどのような点がカギになるのか、といったチェックが重要となる。

 安倍内閣では、産業競争力会議がミクロレベルでの成長戦略について重要な役割を期待されている。経済特区、ICTを利用した産業革新、農業の競争力強化、科学技術振興など、さまざまな政策が論議されている。こうした取り組みを通じて、岩盤のような規制が大きく修正されることが期待される。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

伊藤元重 [東京大学大学院経済学研究科教授]

いとう もとしげ/1951年静岡県生まれ。東京大学大学院経済学研究科教授。安倍政権の経済財政諮問会議議員。経済学博士。専門は国際経済学、ミクロ経済学。ビジネスの現場を歩き、生きた経済を理論的観点も踏まえて分析する「ウォーキング・エコノミスト」として知られる。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」コメンテーターなどメディアでも活躍中。著書に最新刊『日本経済を創造的に破壊せよ!』(ダイヤモンド社)等多数がある。


伊藤元重の新・日本経済「創造的破壊」論

「アベノミクス」によって大きく動き始めた日本経済。いまだ期待が先行するなか、真に実体経済を回復するためになすべき「創造」と「破壊」とは? 安倍政権の経済財政諮問会議議員を務める著者が、日本経済の進むべき道を明快に説く! 

「伊藤元重の新・日本経済「創造的破壊」論」

⇒バックナンバー一覧