令和の時代に、“人を大切にして、地域に貢献する企業”が輝く理由

2030年での達成を目指すSDGs――そのゴール8「働きがいも経済成長も(Decent Work and Economic Growth)」、ゴール11「住み続けられるまちづくりを(Sustainable Cities and Communities)」を継続している企業がある。収益不動産の再生・売買事業、賃貸管理事業(プロパティマネジメント)を行う武蔵コーポレーション(さいたま市大宮区)だ。昨年(令和6年/2024年)には、埼玉ちゃれんじ企業経営者表彰で埼玉県知事賞を受賞するなど、地元にも欠かせない存在だ。“人を大切にして、地域に貢献する”ことを目指す企業は多いが、実現はなかなか難しい――同社を創業した大谷義武さん(代表取締役)に、その実現までの道のりと「住まいで人を笑顔に」する方法を聞いた。(ダイヤモンド社 人材開発編集部、撮影/菅沢健治)

大企業で知った“向いていない仕事”を行う難しさ

 武蔵コーポレーション株式会社(以下、武蔵コーポレーション *1)の代表取締役を務める大谷義武さんは、三井不動産株式会社の新卒社員として、社会人生活をスタートした。

*1 武蔵コーポレーション株式会社(本社:埼玉県さいたま市大宮区)は、日本ではまだ数少ない個人向け資産運用会社(プライベートアセットマネジメント)。不動産の中でもアパートやマンションといった収益不動産に特化した事業展開を創業以来行っている(ホームページより)。

大谷 三井不動産さんで、私は、大型商業施設のテナント誘致の仕事に就きました。数百軒の店舗が入るショッピングセンターです。契約相手が大企業のときは、主に出店開発の方との話し合いでしたが、規模の小さな企業は経営者の方と直接向き合うことが多かったですね。業種はアパレル・飲食・英会話学校……とさまざまで、当時24、25歳の私が、社長さんと名刺交換させていただき、一緒にお酒を飲みに行ったり、ゴルフや旅行に誘われたり、結構かわいがられました。何人かの方とは、いまでも仲良くさせていただいています。経営者のみなさんの言葉や行動から、私は多くの刺激を受けました。

 開業まで、長大な時間と多額な工費を要する大型商業施設――不動産デベロッパーでは、あらゆる社員が分担された業務に携わっていくが、大谷さんが仕事の“やりがい”を感じたのは入社2年目からだという。

大谷 実は、最初の配属先での仕事は、「土地の仕入れ」でした。それはチームで行うもので、新入社員の私はいちばん下の立場。下働きの役割です。ところが、書類づくりといった事務仕事が、私には向いていなくて、たった1年で、テナント誘致の仕事に替わりました。向いていない仕事を続けるのは難しい――このことを若いときに実感した私は、いま、武蔵コーポレーションの社員に苦手な仕事をさせないようにしています。もちろん、得意なことを行うのがベストですが、得意なことがない人もいるし、自分では気づかない場合もあります。サッカーで言えば、走るのがそれほど速くない選手は、フォワードではなく、サイドバックで活躍すればいいのです。

令和の時代に、“人を大切にして、地域に貢献する企業”が輝く理由

武蔵コーポレーション株式会社

代表取締役 大谷義武 (おおやよしたけ)

昭和50年(1975年)、埼玉県熊谷市出身。東京大学経済学部経済学科卒。平成11年(1999年)、三井不動産株式会社入社。商業施設本部、ビルディング本部に所属し、商業施設の開発・運営業務、オフィスビルの運営業務に携わる。平成17年(2005年)、三井不動産株式会社を退社。同年、有限会社武蔵コーポレーションを設立(その後、株式会社に改組)。さいたま市在住。著書に『利益と節税効果を最大化するための収益物件活用Q&A50』『絶対に後悔しない新卒の「会社選び」』など多数がある。