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上久保誠人のクリティカル・アナリティクス

なぜ日本で財政再建が進まないのか

上久保誠人 [立命館大学政策科学部教授、立命館大学地域情報研究所所長]
【第73回】 2013年12月27日
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 安倍晋三政権は、来年度の政府予算案を閣議決定した。一般会計の総額は、過去最大の95兆8823億円に達した。安倍首相は11月の経済財政諮問会議で「歳出削減の徹底」を宣言していた。だが、「国土強靱化」を唱える族議員の要求によって、公共事業費は12.9%増の6兆円。安倍首相の指示で防衛予算も防衛費も2.8%増の4.9兆円となった。歳出で最も大きい社会保障費は4.8増の30.5兆円と、初めて30兆円を突破した。「首相宣言」は骨抜きとなってしまったようだ。

 また、安倍首相は「2015年度までに国・地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)の国内総生産(GDP)対比の赤字を10年度比で半減、20年度までに黒字化する」という財政健全化目標を国際公約していたが、その達成は難しくなったともいえるだろう。

 今回は、「なぜ日本で財政再建が進まないのか」という古くて新しい問いに対して、1つの「異論」を提示してみたい。

なぜ日本では財政再建が進まないのか:
政治家の利益誘導、官僚の利己的行動、ボトムアップの政策過程

 これまで、なぜ日本の財政赤字が拡大してきたかについては、さまざまな説明が試みられてきた。まず「政治家による有権者への利益誘導」の結果という主張がある。この連載でも、利益誘導政治の問題は何度も指摘してきた(第38回・P.5を参照のこと)。ただ、なぜ政治家が利益誘導に邁進するのかについては、多様な指摘がなされてきた。

 まず、有権者やさまざまな業界が、財政について詳しい知識を持たず、将来の財政赤字の深刻さを理解できないことだ。また、国家運営について当事者意識を持つこともないので、際限ない利益誘導を政治家に求め続けることである。政治家も選挙での再選を果たすために、これを拒めないため、その結果、財政赤字が増え続けるとする指摘がある。

 次に、「世代間対立」(第34回を参照のこと)で財政赤字を説明する議論がある。高齢者は若者世代よりも有権者が多い。その結果、政治家は高齢者の利益を優先した政策を打ち出しがちになる。例えば、毎年1兆円規模で増え続ける社会保障費を、政治家がなかなか削減できない現実がある。また、まだ選挙権のない将来世代は、現在の予算編成に対して意見を述べることができない。だから、現役世代は将来世代に財政赤字の負担を容易に押し付けることができるため、財政規律の歯止めが効きにくくなっている、とする指摘もある。

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上久保誠人 [立命館大学政策科学部教授、立命館大学地域情報研究所所長]

1968年愛媛県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、伊藤忠商事勤務を経て、英国ウォーリック大学大学院政治・国際学研究科博士課程修了。Ph.D(政治学・国際学、ウォーリック大学)。博士論文タイトルはBureaucratic Behaviour and Policy Change: Reforming the Role of Japan’s Ministry of Finance。

 


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国際関係、国内政治で起きているさまざまな出来事を、通説に捉われず批判的思考を持ち、人間の合理的行動や、その背景の歴史、文化、構造、慣習などさまざまな枠組を使い分析する。

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