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三谷流構造的やわらか発想法

ゴリラとドラゴン 100年の死闘
~身近な「なぜ」を探究する[3]

三谷宏治 [K.I.T.虎ノ門大学院主任教授]
【第76講】 2013年12月26日
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ゴリラ、世界を制す

 世界のスマートフォンのディスプレイ表面は、過半がコーニング製で名前をゴリラ・ガラス(Gorilla Glass)といいます。

 割れにくく傷つきにくいということでiPhoneやiPadのカバーガラスとして採用され(*1)、以降、旭硝子のドラゴントレイル(Dragontrail)の追撃を振り切り、首位に君臨しています。年間の売上高は1000億円以上で、高い収益率を誇ります。

 でも、もともと「用途不明のガラス」でした。“Project Muscle”と銘打って1950年代末から数年掛けて開発はしたものの、その完成した強化ガラスは大きな用途を見つけられないまま、細々と航空機用や自動車レース用に使われていました(*2)

 2006年、初代iPhoneを開発していたアップルは「スマートフォンのディスプレイ表面は鍵より硬くなきゃダメ」と気がつきます。ポケットに一緒に入れると中でぶつかって、ディスプレイが傷つくからです。

 いわゆるビッカース硬度(単位はHv、値が大きいほど硬い)でいえば、硬貨が45~170、鍵のようなものだと200に達するものもあります。高級自転車のフレームやM16カービン銃の銃身にも使われるクロムモリブデン鋼(クロモリ鋼)で300~400といったところ。

 この強化ガラスのことを聞いたジョブズは、コーニングのCEOを(無理やり)説得してiPhone向け量産を決意させます。2007年6月、初代iPhoneとともにゴリラ・ガラスはこの世に再デビューを果たしました。ビッカース硬度622~701。鍵どころかカッターでも「刃」が立たない、最強のスマートフォンの誕生でした。

上の写真は傷ついてしまったSHARP IS03

 本当か? と思って、自分のスマートフォンでもやってみましたが、本当にカッターでも傷つきませんでした(*3、やるときは自己責任で!)。

 

 


*1 公式には肯定も否定もされていない。
*2 もともとは乗用車のフロントガラスなどの用途を狙ったが、高コストすぎて採用されなかった。
*3 HTCのJ ISW13HT。ちなみにSHARP IS03でやったら見事に傷がついた……。

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三谷宏治 [K.I.T.虎ノ門大学院主任教授]

1964年大阪生まれ、福井育ち。小1のとき読書と読みかじりを人に教える快感に目覚め、駿台予備校では教えることの技術に衝撃を受ける。東京大学 理学部物理学科卒業後19年半、BCG、アクセンチュアで戦略コンサルタントとして働く。2003年から06年までアクセンチュア 戦略グループ統括。途中、INSEADでMBA修了。
2006年から教育の世界に転じ、社会人教育と同時に、子どもたち・親たち・教員向けの授業や講演に全国を飛び回る。「決める力」「発想力」と「生きる力」をテーマに毎年8000人以上と接している。現在K.I.T.(金沢工業大学)虎ノ門大学院 主任教授(MBAプログラム)の他に、早稲田大学ビジネススクール、グロービス経営大学院、女子栄養大学で客員教授、放課後NPO アフタースクール及びNPO法人 3keys 理事を務める。永平寺ふるさと大使。
著書多数。『一瞬で大切なことを伝える技術』(かんき出版)は啓文堂書店2012ビジネス書大賞、『経営戦略全史』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)はダイヤモンドHBRベスト経営書2013第1位、ビジネス書大賞2014大賞、『ビジネスモデル全史』(同)はHBRベスト経営書2014第1位となった。
HPは www.mitani3.com

 

 


三谷流構造的やわらか発想法

発想法ってなんのために存在するのでしょう? ヒトと違うアイデアや答えを出すためです。統計的に有意な戦略なんて、定義により無価値ですし、統計的に正しい発想法なんてあるわけがありません。発想に「普遍性」や「高確率」を求めるなんてそもそも矛盾しているのです。発想法も、然り。これまでと違うものを生み出すには、新しい発想法がいま求められているのです。

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