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原英次郎の「強い中堅企業はここが違う!」 トップに聞く逆境の経営道

経営の素人の女性社長が守った
日本の醸造技術と家族的経営(上)
―フジワラテクノアート藤原恵子社長

原 英次郎 [週刊ダイヤモンド論説委員]
【第11回】 2009年12月16日
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岡山空港から、車でわずか2分。美しく色づいた木々に囲まれた丘陵地に、フジワラテクノアートの本社と工場がある。後述するが、同社の藤原恵子社長は、創業家の出身ながら、経営や技術については、全くの素人だった。フジワラテクノアートは醤油、みそ、日本酒、焼酎などをつくる醸造機械のトップメーカーである。同社の創業は1933年。創業者である藤原研翁氏が岡山市内で、醸造機械の製造を開始した時から、一貫してこの分野に取り組んできた。現在、国内の製麹(せいぎく)能力ベースで、70~75%のシェアを持つ。製麹とは麹(こうじ)菌を使って、麹を作ることである。同社が高シェアを維持している、要因は何なのだろうか。

藤原社長:とても地味な業界ですけれど、やはり醸造というのは、日本の食文化の中心です。日本が世界に誇る食文化を支えている基本の部分だと思っていますので、私も含めて社員一同が、微力ながら日本の食文化を支えているという「自負」を持って、仕事をさせていただいています。

藤原恵子
フジワラテクノアートの藤原恵子社長は創業家出身。しかし経営や技術には全くの素人だったという。経営者だった夫の死という危機をいかにして乗り切ったのか。

 私どもがなぜシェアが高くなったかということですけれども、常にお客様の満足を追求することに、力を注いできたからではないかと思います。もちろん企業ですから、利益が欲しいのは当然なんですけれども、利益を追求するのではなく顧客満足を第一に追求するというところに、わが社の強みがあるのではないかと思っております。

同社の基盤を確固たるものにしたのが、自動製麹機の開発である。従来、職人技の賜物(たまもの)だった麹(こうじ)づくりを自動化した。職人からノウハウや味の評価方法を聞き取って理論化し、ファジー制御技術の導入によって、完全自動化に成功した。

 1年中、均一で品質の良い麹が作れますし、衛生面で見てもいい。全部自動で行いますから、人手も少なくて済みます。それが自動製麹機の特徴だと思います。

 例えば、日本酒では今でも伝統的なやり方で仕込みを行っているお蔵もありますが、段々、杜氏(とうじ)さんも少なくなっているので、技術を伝承していくというのが、次第に難しくなってきています。ですから、機械に頼るというのではなくて、機械をうまく使いこなして、それぞれのお蔵の技術を伝えていくということなんです。

 麹造りはきつい仕事で、仕込みにあたっては重いお米を担いだり、一晩、温度や湿度の高い蔵の中に泊まり込まなくてはなりませんが、自動製麹機によって、そのような作業もやらずに済むようになりました。

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原 英次郎 [週刊ダイヤモンド論説委員]

1956年生まれ、佐賀県出身。慶應義塾大学経済学部卒。
1981年東洋経済新報社に入社。金融、証券、エレクトロニクスなどを担当。
1995年『月刊金融ビジネス』、2003年4月『東洋経済オンライン』、
2004年4月『会社四季報』、2005年4月『週刊東洋経済』の各編集長などを経て、2006年同社を退社。
2010年3月ダイヤモンド・オンライン客員論説委員、2011年10月編集長、2015年1月より現職。
主な著書に『銀行が変わる?!』(こう書房)、『素人のための決算書読解術』(東洋経済新報社)。

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