経営統合前に、身支度を整えなければ──。半導体製造装置大手の東京エレクトロンが勝負を懸けて実施したM&Aからわずか1年で、巨額の特別損失を計上した。東京エレクトロンは昨年12月、2013年度の業績の下方修正を発表。最終損益は230億円の黒字予想から一転、220億円の赤字予想へと転落したのだ。
赤字転落の原因は462億円の特別損失の計上にある。その内訳には国内拠点の再編なども含まれるが、最大の元凶は12年11月に買収したばかりの太陽光パネル製造装置(ソーラー)事業である。
そもそもソーラー事業への本格参入は、太陽電池の価格下落やシリコン薄膜型太陽電池の需要低迷で、当時から関係者の間では将来性が疑問視されていた。東京エレクトロンの経営統合相手であり、当時はライバル関係にあった米アプライドマテリアルズはさっさと見切りをつけ、12年に事業再編して撤退を進めた分野でもある。
だが、「半導体製造装置と液晶パネル製造装置に次ぐ、第3の柱を育てたい」と、昨年4月に健康上の理由で退任した竹中博司前社長が音頭を取って推進。赤字だったスイスのエリコン・ソーラー社を2.5億スイスフラン(当時のレート換算で約225億円)で買収することを決断した。
しかし、周囲の懸念通り、市場への過剰供給が続いた太陽電池の価格は下落していき、13年3月には世界最大の太陽電池メーカーである中国のサンテックパワーが経営破綻。太陽光パネル製造装置の需要も低迷していた。
東京エレクトロンでも、13年度上半期のソーラー事業の売上高は32億円だったにもかかわらず、営業赤字が57億円に膨らんでおり、苦しい状況が続いていた。
結局、「今後数年はキャッシュを生み出す事業にならない」(東哲郎会長兼社長)と結論づけざるを得ず、買収からわずか1年で、ソーラー事業で328億円の減損を計上。茨城県の研究開発拠点を閉鎖し、山梨県の拠点へ集約する状況に追い込まれた。