長い間信じ続けられた
「逆転現象」

 1990年2月、通産省(現在の経産省)は1990年から2000年までの10年間を「省エネルギー推進期間」、2000年から2010年までの10年間を「クリーンエネルギー推進期間」とする「地球再生計画」を発表しました。クリーンエネルギー推進のための方策が原子力推進でした。

 これら各国の「国策」によって「クリーンエネルギー=原子力」が広範にPRされ、人々の脳裏に刻みこまれました。

 クリーンエネルギーを最初に提唱したエイモリー・ロビンスはこの間、たくさん本を書き、各国でコンサルタント活動を行なっていましたが、逆転現象はそのまま続きました。新著『新しい火の創造』で誤解を払拭し、原発ゼロ、炭酸ガス削減社会による成長戦略を描くことができるでしょう。ロビンスは原発について第5章「電力」でこう書いています。

 日本での惨劇は、原発の核燃料廃棄物の貯蔵という永劫の問題を再表面化させた。福島原発から放出された放射性物質は、原子炉の上に貯蔵されている使用済み核燃料が過熱したり、燃えたりして出たものだ。日本と同じように、米国の使用済み核燃料は、永久貯蔵施設がまだなく、場所の選定に信頼できるプロセスもないために、国全体で原子炉のある場所に保管されている。専門家の中には、この使用済み核燃料貯蔵プールは、原子炉そのものよりも大きな被害をもたらすと確信している人もある。使用済み核燃料を再処理するのはコストとリスクを大きくするだけだろう。/だが、先に述べた通り、原子力発電は福島の事故よりはるか前、スリーマイルアイランドの事故(1979年)の1年前には、活気を失った市場の要請によって、米国での原発設備発注数は急落し、他のものに追い抜かれてしまっていたのだ。(382ページ)

 本書は米国を対象としているため、原発にはあまり言及していません。電力業界が自由化された米国では、コストとリスクの見合いから、原発建設を対象とする資本の出し手がまったくいないからです。政府が投資するしかありません。