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データサイエンティストの冒険

サプライチェーンに差をつけるデータサイエンス

工藤卓哉 [アクセンチュア]
【第10回】 2014年2月18日
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 今回は、アクセンチュアで行われているデータサイエンスの具体的な例としてアクセンチュア・フルフィルメントサービス(在庫補充最適化サービス)について説明します。

小売りチェーンでは
日々の発注処理の計算が数百万~数千万件に

 データサイエンスの身近な例として、小売店舗における商品補充の自動化が挙げられます。多種多様な商品を極力品切れせずに店舗に揃えられるのも、データサイエンスの成果です。サプライチェーン上の膨大なデータを管理して在庫水準や補充を最適化するサービスがアクセンチュア・フルフィルメントサービス(以下、AFS)となります。

 多くの企業においてサプライチェーンの複雑性は昔よりもどんどん増してきています。例えば商品のカテゴリ、SKUそのものも増え、事業展開地域、店舗も増えています。中規模のスーパーマーケットで数万SKU、大規模店では数十万SKUにも及びます。さらに複数ある店舗を管理する場合、すべての店舗の商品数を合わせて、日々発注する件数は数百万~数千万件にも達します。小売りチェーンの本部であれば、これだけの規模の件数を毎日計算することになります。

 一般的には、川下の店舗からバケツリレー式に中間卸、卸、メーカー販社、メーカーへと注文が伝えられていきます。この間にある各レイヤーがバッファを積んで、さらに上流に要求を課していったりするので、在庫量が膨れ上がるといった状況が発生します。サプライチェーン全体として在庫はたくさんあるのに、末端の店舗では欠品が起きているということが起こるのです。末端の店舗間では偏在庫が発生し、ある店舗では在庫が余っているのに、別の店舗では欠品が起きているということは日常的に散見されています。

 一方AFSでは毎日、販売店の実需情報、販売の実績データに加え、直近数週間の傾向、過去数年分の販売実績に基づく季節性・土日休日の影響なども加味して、非常に精緻な統計計算を行い、導入企業各店舗の商品それぞれについて、統計的に過不足しない発注数を自動的に計算しています。AFSの特徴は、最適補充数算出に必要な各種パラメーターが更新されることで、これにより導入企業の小売店は、季節性や販促キャンペーンなどイレギュラーな状況にあっても、高い発注精度を維持・向上することが可能になり、機会損失や廃棄ロスを削減することができるようになります。

AFS導入による欠品の解消事例(赤)~未導入店舗(青)との比較
出典:アクセンチュア

 実際に導入した結果を示したのが上図となります。これは同じ顧客企業の店舗同士を比較したもので、AFS導入の効果が明確に表れています。AFS導入前は、どちらも欠品率が10%超とかなり高い状態だったのが、AFS導入店舗では稼働直後に大きく下がり、その後も継続的に低い欠品率におさまっています。

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工藤卓哉[アクセンチュア]

Accenture Data Science Center of Excellence 北米地域統括 兼
アクセンチュア アナリティクス日本統括 マネジング・ディレクター
慶應義塾大学を卒業しアクセンチュアに入社。コンサルタントとして活躍後、コロンビア大学国際公共政策大学院で学ぶため退職。同大学院で修士号を取得後、ブルームバーグ市長政権下のニューヨーク市で統計ディレクター職を歴任。在任中、カーネギーメロン工科大学情報技術科学大学院で修士号の取得も果たす。2011年にアクセンチュアに復職。 2016年4月より現職。 データサイエンスに関する数多くの著書、寄稿の執筆、講演活動を実施。


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