まつお・ひろふみ
京都大学工学部数理工学科卒業。1984年米マサチュ-セッツ工科大学大学院経営学研究科博士課程修了。米ペンシルバニア大学経営大学院客員準教授、米テキサス大学オースティン校経営大学院教授(Fred H. Moore Professorship)、筑波大学社会工学系教授を経て、2004年から神戸大学大学院経営学研究科教授。専攻はオペレーション・マネジメントとサプライチェーン・マネジメント。国際的学術雑誌の論文多数、編集委員を歴任。現在、日本オペレーションズ・マネジメント&ストラテジー学会会長。

 オペレーションズ・マネジメント(オペマネ)は欧米のビジネススクールでは必須科目である。オペレーションズ・リサーチや経営工学ではない。ビジネススクールの技術管理という科目でもない。オペマネは、製造業とサービス業の事業プロセスを対象とする学問体系で、企業と組織の事業プロセスを中心に、製品、顧客、マーケティング、経営、戦略を考える科目である。

 筆者は、MIT(マサチューセッツ工科大学大学院)で、オペマネでPh.D.を習得し、テキサス大学オースチンのビジネススクールで15年間オペマネの研究と教育に従事してきた。神戸大学のMBAプログラムでは、『オペマネ応用研究』を担当している。また、オペマネの代表的な学会である米国のPOMS学会、欧州のEurOMA学会と連携している日本オペレーションズ・マネジメント&ストラテジー学会(JOMSA)の会長を現在、務めている。

 本シリーズでは、オペマネの基本的な思考法を解説し、日本の製造業が陥っている問題点の解決策を、事業プロセスの見直しというオペマネの方法論から議論する。簡単な事例、極端な事例、理論と実践を取り混ぜて、論理的に考えるための糧(Food for thought)を提供することを目指す。第1回目の本稿では、「事業プロセスから戦略を組み立てる」という思考法を紹介する。

戦略が先かプロセスが先か

 ニワトリが先か、卵が先かというような話で、戦略を先に立てて、事業プロセスに落とし込むということをせずに、先に、事業プロセスを複数考えて、戦略を組み立てていくということを考える。複数のプロセスを創造、比較、分析することにより、単なる思いつき、思い込みでない戦略立案が可能となる。