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経済ジャーナリスト 町田徹の“眼”

公務員制度改革を無力化
漆間副長官の野望に屈した自民党

町田 徹 [ジャーナリスト]
【第70回】 2009年4月3日
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 西松建設による巨額献金事件に関連して、自民党議員には捜査が波及しないと発言しながら、「記憶にない」と言い張って責任追及の矛先をかわしたと報じられ、日本国中に悪名を轟かせた、あの漆間巌内閣官房副長官が、もうひとつの戦いでも“勝利の美酒”に酔いしれようとしているという。

 この戦いとは、国家公務員制度改革の目玉として新設される「内閣人事局長」ポストを、日本の官僚の頂点の座にある漆間副長官の地位を脅かすことのない無力な存在に弱体化させるというものだった。

 紆余曲折の末、漆間副長官は今、このポストを漆間副長官自身が兼務するウルトラCによって、自身の地位を脅かしかねないポストから、逆に、権力を強化する武器に変えようとしているとされるのだ。

 もちろん、その勝利の陰には、麻生太郎首相の見当違いのリーダーシップの発揮が存在する。この間違いを正せなかった与党・自民党の責任も大きい。何よりも、漆間副長官が地位保全の戦いに勝利したことで、「国益より省益」という官僚たちから政治の実権を取り戻すはずの国家公務員制度改革が後退しつつあることは看過できない事態である。

 「麻生内閣としては、今、ご指摘のとおり。事務の(漆間巌)副長官を(新設する内閣人事局長に)当てたい」――。

 河村建夫官房長官は3月24日の参議院内閣委員会で、民主党の松井孝治議員の質問に答え、それまでのスタンスをひるがえした。注目の内閣人事局長職に現在3人いる内閣官房副長官のうちの唯一の事務、つまり官僚出身の漆間氏を当てると言い放ったのだ。この河村官房長官の変節こそ、後述する麻生首相の見当違いの“指導力”発揮と並ぶ漆間官房副長官への援護射撃に他ならなかった。

 ちなみに、それまでの河村官房長官のスタンスとは、同13日の首相官邸における記者会見で示したもので、内閣人事局長に官房副長官より格が下の政務官を当てるという前提ながら、「(内閣人事局長には)やはり政治家を選ぶことになると思います。それはやはり政治主導のあらわれであろうと、こう思いますので、まずこれはそういう形でスタートさせることが大事だろうと考えています」と述べていたことを指す。

内閣人事局構想を
警戒していた漆間副長官

 この漆間副長官の処理の意味を正確に理解するには、まず、新設される内閣人事局長ポストの重要さを理解する必要があるだろう。このポストは、文字通り、昨年、福田康夫政権下で成立した国家公務員制度改革基本法で設置が決まった内閣人事局を統括するためのもの。そして、内閣人事局は、これまで各省庁に所属していた国家公務員のうち幹部公務員(約600人)の人事を所管しようという組織だ。この権限の移管によって、省益にとらわれがちだった公務員の人事を、内閣(首相)主導で行う仕組みに改め、それによって幹部官僚のマインドを省益追求から国益追求に変えようという狙いがある。

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町田徹 [ジャーナリスト]

1960年大阪府生まれ。神戸商科大学(現兵庫県立大学)卒。日本経済新聞社に入社後、記者としてリクルート事件など数々のスクープを連発。日経時代に米ペンシルバニア大学ウォートンスクールに社費留学。同社を退社後、雑誌「選択」編集者を経て独立。日興コーディアルグループの粉飾決算をスクープして、06年度の「雑誌ジャーナリズム賞 大賞」を受賞。「日本郵政-解き放たれた「巨人」「巨大独占NTTの宿罪」など著書多数。


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