今回は、ベンチャー企業で働く20代の社員の「悶え」を紹介したい。筆者は、何度もこの会社に出入りしているのだが、ある30代の男性社員による若手の「しごき」が目につく。本人は部下である20代の社員たちに指導をしているつもりなのだろうが、筆者がその場にいるのが苦しくなるほどにスパルタ教育がまかり通っている。
だが、この30代の男性は40代の社長(創業者)から信頼されているからか、社内では誰もそのしごきを止めようとはしない。むしろ、エスカレートしている。ここには、20代の経験の浅い社員が苦しむ組織の構造がある。今回は、その仕掛けや仕組みに焦点を合わせ、取材を試みた。
読者諸氏も、気づかないうちに部下や後輩に対して似たような仕打ちをしていないだろうか。
わけのわからぬまま罵倒される毎日
若手が悶えるベンチャーの「しごき」
「あの人は、1つずつのことに、こうしろ、ああしろ、と言う。だけど、自分にはその全体像が見えない。僕は、社会人になって日が浅い。わからないことが多い。そもそも、この会社や日々の仕事など、理解できないことがものすごく多い」
入学者を増やすための広告プロモーションを全国の高校(特に私立)や専門学校などから請け負う代理店に勤務する飯田秀明(仮名・26歳)が話す。
この代理店に入り、1年目。大学を卒業した後、数年間不動産販売の会社で働いた。だが、仕事の内容に不満があり、退職。3ヵ月ほどの求職活動を経て、今の会社に入社した。
ほぼ毎日“上司”である30代半ばの男性の夏野(仮名)から、しごきを受ける。たとえば、クライアントに電話を入れるとき、夏野はすぐ横でやりとりを聞いている。そして飯田が電話を切ると、すかさず始める。
「今、『午後1時から1時30分頃にうかがいます』と君は言っただろう? そんなルーズなことを言えば、相手に失礼だろう!? 『午後1時にうかがいます』と、きっかり時間を指定するんだよ……」