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悶える職場~踏みにじられた人々の崩壊と再生 吉田典史

自己チューおやじの怒号が鳴り止まぬ職場は傷だらけ
20代の若手を潰す「ベンチャーしごき」の憂鬱な内情

吉田典史 [ジャーナリスト]
【第29回】 2014年2月4日
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 今回は、ベンチャー企業で働く20代の社員の「悶え」を紹介したい。筆者は、何度もこの会社に出入りしているのだが、ある30代の男性社員による若手の「しごき」が目につく。本人は部下である20代の社員たちに指導をしているつもりなのだろうが、筆者がその場にいるのが苦しくなるほどにスパルタ教育がまかり通っている。

 だが、この30代の男性は40代の社長(創業者)から信頼されているからか、社内では誰もそのしごきを止めようとはしない。むしろ、エスカレートしている。ここには、20代の経験の浅い社員が苦しむ組織の構造がある。今回は、その仕掛けや仕組みに焦点を合わせ、取材を試みた。

 読者諸氏も、気づかないうちに部下や後輩に対して似たような仕打ちをしていないだろうか。


わけのわからぬまま罵倒される毎日
若手が悶えるベンチャーの「しごき」

 「あの人は、1つずつのことに、こうしろ、ああしろ、と言う。だけど、自分にはその全体像が見えない。僕は、社会人になって日が浅い。わからないことが多い。そもそも、この会社や日々の仕事など、理解できないことがものすごく多い」

 入学者を増やすための広告プロモーションを全国の高校(特に私立)や専門学校などから請け負う代理店に勤務する飯田秀明(仮名・26歳)が話す。

 この代理店に入り、1年目。大学を卒業した後、数年間不動産販売の会社で働いた。だが、仕事の内容に不満があり、退職。3ヵ月ほどの求職活動を経て、今の会社に入社した。

 ほぼ毎日“上司”である30代半ばの男性の夏野(仮名)から、しごきを受ける。たとえば、クライアントに電話を入れるとき、夏野はすぐ横でやりとりを聞いている。そして飯田が電話を切ると、すかさず始める。

 「今、『午後1時から1時30分頃にうかがいます』と君は言っただろう? そんなルーズなことを言えば、相手に失礼だろう!? 『午後1時にうかがいます』と、きっかり時間を指定するんだよ……」

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吉田典史 [ジャーナリスト]

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006 年からフリー。主に人事・労務分野で取材・執筆・編集を続ける。著書に『あの日、負け組社員になった・・・』『震災死 生き証人たちの真実の告白』(共にダイヤモンド社)や、『封印された震災死』(世界文化社)など。ウェブサイトでは、ダイヤモンド社や日経BP社、プレジデント社、小学館などで執筆。


悶える職場~踏みにじられた人々の崩壊と再生 吉田典史

 企業で働くビジネスマンが喘いでいる。職場では競争原理が浸透し、リストラなどの「排除の論理」は一段と強くなる。そのプロセスでは、退職強要やいじめ、パワハラなどが横行する。最近のマスメディアの報道は、これら労働の現場を俯瞰で捉える傾向がある。

 たとえば、「解雇規制の緩和」がその一例と言える。事実関係で言えば、社員数が100以下の中小企業では、戦前から一貫して解雇やその前段階と言える退職強要などが乱発されているにもかかわらず、こうした課題がよく吟味されないまま、「今の日本には解雇規制の緩和が必要ではないか」という論調が一面で出ている。また、社員に低賃金での重労働を強いる「ブラック企業」の問題も、あたかも特定の企業で起きている問題であるかのように、型にはめられた批判がなされる。だが、バブル崩壊以降の不況や経営環境の激変の中で、そうした土壌は世の中のほとんどの企業に根付いていると言ってもいい。

 これまでのようにメディアが俯瞰でとらえる限り、労働現場の実態は見えない。会社は状況いかんでは事実上、社員を殺してしまうことさえある。また、そのことにほぼ全ての社員が頬かむりをし、見て見ぬふりをするのが現実だ。劣悪な労働現場には、社員を苦しめる「狂気」が存在するのだ。この連載では、理不尽な職場で心や肉体を破壊され、踏みにじられた人々の横顔を浮き彫りにし、彼らが再生していくプロセスにも言及する。転機を迎えた日本の職場が抱える問題点や、あるべき姿とは何か。読者諸氏には、一緒に考えてほしい。

「悶える職場~踏みにじられた人々の崩壊と再生 吉田典史」

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