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岸博幸のクリエイティブ国富論

「大学発ベンチャー」という
イノベーションを騙った予算の無駄遣いを許すな

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
【第255回】 2014年2月7日
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 一部報道で補正予算での無駄な公共事業の復活が批判されていますが、無駄が起きているのは公共事業だけではありません。今年度補正予算の中には、イノベーションや大学発ベンチャーという流行りを悪用したもっとタチの悪い無駄、バラマキ予算があります。それは、文科省の「官民イノベーションプログラム」です。

プログラムの致命的な問題点

 この事業は、国が4つの国立大学(東北大、東大、京大、大阪大)に合計1000億円を出資し、これらの大学の中に官製ファンドのようなものを作って、研究成果を活用した大学発ベンチャーを支援しようというものです。

 米国と違って日本では大学発ベンチャーが少ないため、そこに政策的支援を行なうという方向性は正しいのですが、民間の投資ファンドの世界を知らない文科省が強欲な大学と協調した結果、絶対に資金が有効活用され得ないスキームとなっているのです。

 大学内でベンチャー投資を行なう場合、投資する側とされる側が同じ学内にいることになりますので、当然ですがガバナンスの強化、具体的にはベンチャーの組成・運営といった事業を行なう側とそこに投資を行なう側をしっかり分けることが不可欠です。しかし、この点についての文科省の意識はあまりに緩いと言わざるを得ません。

 文科省は補正予算の策定段階では(図1)のようなスキームを考えました。左下の国立大学法人のところを見ると、大学の執行部の下に投資サイドが置かれ、事業サイドは独立の存在となっていました。

 それが、補正予算の成立後にはスキームが(図2)のように変化し、大学執行部の下には事業サイド(“共同研究推進グループ”)が置かれ、投資サイド(“共同研究・事業化委員会”)が独立の存在になっています。

 即ち、文科省の考えでは常に、大学の執行部はどちらかのサイドに関与することが前提になっているのです。しかし、本来は大学の執行部はそのどちらにも組みすることなく中立的な立場にいなくてはいけないのではないでしょうか。大学執行部の権限は絶大ですので、あらゆる点から中立的な立場を貫かないと、政治家の口利きと同じことが学内で展開され、公的資金の大学内での配分が歪められかねないからです。

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岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス・マーケティング株式会社取締役、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社顧問も務める。

 


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